「アパートの建て替えをしたい」「老朽化しているので更地にしたい」と感じているアパートオーナーの方が抱える大きな問題は入居者の立ち退きです。
アパートを建て替えたり、土地を更地にしたりするためには、入居者にアパートから出てもらう必要があります。
しかし借主にも都合があり、さらにアパートには入居者が複数いるため、全員に立ち退きをしてもらう事は難しく、大きなトラブルや裁判に発展してしまう事すらあります。
立ち退きをスムーズに行うためは、立ち退きの正しい進め方や立ち退き料(迷惑料)の決め方や相場、立ち退きを成功させる交渉術をオーナーが理解する必要があります。
立ち退きを成功させる上で、オーナーにとって必須となる情報についてご紹介していくので参考にしてください。
目次
アパートからの立ち退きの進め方や手順
アパートから立ち退いてもらいたいという気持ちから、計画性もなしに借主に接触してしまうと、立ち退きを拒否される可能性が高くなります。
立ち退きをお願いする時は、正しい手順で行うことを意識するようにしましょう。
立ち退き交渉は、思いつきで行動を起こして成功するような簡単なものではないことを忘れてはなりません。
アパートからの立ち退きを進める手順は以下のようになります。
この手順はアパートの建て替えや取り壊しに加え、家賃不払いなどの理由による立ち退きでもほとんど同じになります。
- 立ち退きを伝えるタイミングを決める
- 書面によって立ち退きを通知
- 借主に直接説明をする
- 立ち退き料についての説明
- 入居者の立ち退き
上記の5つのステップについて紹介していきます。
アパート立ち退きを通知するタイミング
入居者と立ち退きについて交渉する場合、まず借主に対し立ち退きについて伝えるタイミングを決めなければなりません。
立ち退きという話題は話しづらいため、オーナーの中には手続きを遅らせてしまう方もおられるようです。
正しいタイミングで借主に立ち退きについて伝えることは、以下の観点から非常に重要になります。
- 借主の心情
- 借主の状況
- 契約上のルール
アパートで生活している入居者は、現在の住まいで生活し、会社や学校に通うという生活スタイルができています。
アパートからの立ち退きという話が現実のものとなると、生活の基盤が崩れてしまう事になります。
つまりアパートからの立ち退きは、借主に大きな生活の変化を強いることです。
特に現在の住まいに満足している方や利便性に納得している借主にとっては、立ち退きという話自体が受け入れにくい話でしょう。
その上、ギリギリのタイミングで立ち退きの話をされ、移動のための時間的な猶予がないなら反発が強くなり、立ち退き交渉は上手くいきません。
借主の状況を考慮に入れるなら、期限が迫った段階で立ち退きの話を伝えるのは相応しいものではありません。
さらにアパートに入居している方と賃貸人であるオーナーの間には、賃貸契約が結ばれています。
契約書の中には、契約を解除する時はいつまでに通知を行うという記載が書かれているため、契約内容に違反する事がないようにしなければなりません。
オーナーが賃貸契約違反を行うなら、ただでさえ難しい立ち退き交渉は、より困難なものになってしまいます。
通常の契約を家主側が解除をする場合は、期日の半年前までに予告しなければならないという文言が書かれているはずです。
上記の理由から、最低でも6か月~1年前には、借主に対して立ち退きについて通知するようにしなければなりません。
1年後からアパートを建て替える予定になっているものの、未だに立ち退きについて伝えていない場合、少しでも早く通知して大きなトラブルを避けるようにしましょう。
書面によってアパート立ち退きを通知
立ち退きについての通知時期を決定したら、書面にて立ち退きについて借主に伝えるようにします。
書面に記載する内容は、以下のようなものです。
- 賃貸借契約の終了日
- 立ち退き理由
- 立ち退き時期
- 立ち退き料
立ち退き通知書は、文面が決まっているわけではありませんが、少なくとも上記の内容を含めるべきです。
立ち退き料(迷惑料)の金額相場や決め方については後述します。
通知書の作成を弁護士や仲介不動産会社に依頼する事も可能ですが、基本的に有料サービスになります。
通知書の作成は、それほど難しいものではないため、オーナー自ら作成する方が良いでしょう。
借主にアパート立ち退きを直接説明をする
次のステップは、立ち退きについて入居者に口頭で直接伝える事です。
アパートオーナーの中には、通知書によって立ち退きの理由などについて伝えているため、口頭で伝える必要はないと感じる方もいるようです。
しかし通知書投函の後に、借主と連絡を取り、口頭で立ち退きについて説明する事は非常に重要です。
仮に自分が立ち退く側になった場合、通知書だけの場合と口頭での説明があるのとでは、どちらが受け入れやすいか考えてみると良いでしょう。
通知書だけの説明では、機械的な作業のように感じてしまい、借主の状況についてオーナーが考えていないと思われてしまう可能性もあります。
大きなアパートになれば入居者の数も多くなりますが、面倒がらずに口頭で一人一人に説明する労力を惜しまないようにしてください。
借主がオーナー側の事情を理解してくれれば、立ち退き料を有利な条件で進められる可能性も出てきます。
アパート立ち退き料についての説明
すでに立ち退き通知書(書面)で立ち退き料について説明しているものの、実際に口頭でも立ち退き料について伝えるなら、立ち退きをスムーズに進める事につながります。
書面で一度説明しているので、十分であるという態度を持っていると、立ち退き交渉で揉める可能性が高くなります。
立ち退き料の金額や相場、どのように決めていくのかについては、立ち退き料の項目で詳しく紹介していきます。
入居者のアパート立ち退き
オーナーの提示する立ち退き料に、借主が納得できた場合は、契約終了日までに退去手続きに移ります。
アパートの居住しているすべての借主が納得してくれれば良いですが、場合によっては退去の交渉が長引いてしまう事もあります。
状況によっては裁判になることもありますが、金銭的、時間的、精神的にもできるだけ裁判は避ける方が賢明です。
ですからアパートからの立ち退きにおいて、借主が満足できる立ち退き料を提示することは非常に重要になります。
アパートを改築する際の流れを図で解説
アパートの立ち退きは、きちんとしたスケジュールに従って行う必要があります。
あくまで一例になりますが、以下のようなスケジュールに沿って、借主と立ち退き交渉を行うようにしてください。
立ち退きまでの期間 | 流れ |
---|---|
3年前 | アパート建て替え計画開始 |
2年前 | 新入居者停止 |
1年前 | 通知書送付 |
半年前まで | 借主との交渉 |
立ち退き日 | すべての入居者立ち退き |
アパートの立ち退きを順調に行うためにも、上記の表のように空き部屋があったとしても、新しい入居者との契約は避けるようにしましょう。
どうしても空き部屋が気になる時は、賃貸借契約を定期借家契約と呼ばれる契約方法にし、立ち退き日前に契約が終了するようにしてください。
立ち退きをお願いするには、きちんとした手順が必要なんですね
借主にも生活があるので、立ち退き交渉をする時は、スケジュールに余裕を持たせる事で、相手の気持ちや生活にも配慮する必要があるわけですね。
では、ここからはなぜ立ち退きをお願いする時は慎重に行う必要があるのか?
アパートから入居者を立ち退かせるのは難しい
すでに何度か紹介しましたが、借主との立ち退き交渉は非常に難しいものです。
大きなトラブルなく立ち退きに応じてくれる入居者もいれば、何度訪問しても交渉が決裂してしまう方もいます。
ではなぜアパートから入居者を立ち退かせるのは大変なのでしょうか?
賃貸借契約は2種類 立ち退きを進める上で正確な理解を深めておきましょう
建物の賃貸借契約に関する規定は、借地借家法によって定められています。
通常の賃貸借に関係する事であれば、民法によって定められていますが、建物の賃貸借は特別な配慮を払うべき分野として借地借家法という法律が別に定められています。
借地借家法によって定められている建物の賃貸借契約は以下の2種類です。
- 普通借家契約
- 定期借家契約
アパートのオーナーであれば、契約の種類について理解されているかもしれません。
しかし立ち退きを進める上で、借主に契約について説明する必要性もあるため、正確な理解を確認しておきましょう。
比較項目 | 定期借家契約 | 普通借家契約 |
---|---|---|
契約方法 | 公正証書などの書面 | 口頭・書面どちらも可能 |
契約更新 | 期間満了で契約終了(更新なし) | 正当事由がなければ更新 |
契約期間 | 上限なし | 上限なし |
1年未満の契約 | 可能 | 期間のない契約なら可能 |
賃借料の増減 | 特約に従う | 当事者は増減を請求可能 |
2種類の契約を簡単に表にまとめると上記のようになります。
アパートからの立ち退きに関して、普通借家契約と定期借家契約には大きな違いがあります。
普通借家契約では、契約終了時であっても借主(入居者)が引き続きアパートに住むことを望む場合、貸主が契約更新を拒否するのは難しくなっています。
オーナー側が契約更新を拒否するには、唯一正当事由がある事が条件となります。
つまり普通借家契約では、借主の権利が非常に強いという事です。
それに対し定期借家契約は、契約期間が満了すれば自動的に契約は解除となります。
ただしアパートのオーナーは、契約満了となる日より半年から1年前に、借主に契約終了について通知する必要があります。
仮に貸主と借主の両者が同意するのであれば、定期借家契約は再契約を行うことも可能です。
しかしオーナー側が契約更新を望まない場合、契約は終了するため、立ち退き交渉をする必要はありません。
アパートの立ち退き交渉を行う際、問題になるケースのほとんどは普通借家契約です。
まずはアパート住民との契約の種類を確認するようにしてください。
では、なぜ借地借家法は借主にとって有利な形になっているのでしょうか?
借地借家法は借主を守るためのもの
アパートを賃借している借主にとって、住宅は生活の基本です。
仮に、オーナーの都合によってアパートから立ち退かなければならなくなると、生活の基盤を急に失うことになります。
新しく住む場所がないまま、引っ越ししなければならないとしたら、借主は非常に大きなリスクを抱えてしまうでしょう。
そのため借地借家法は、賃借人(借主)を保護するという目的で制定され、オーナーの都合で簡単に立ち退きを迫る事ができないようにしました。
しかし、どのような状況下でもオーナー側から立ち退き交渉ができないというわけではありません。
借地借家法28条には、建物賃貸借契約の更新拒絶の要件という規定があります。
28条では、賃貸人(オーナー)側が契約更新を拒絶するには、正当事由が必要であると記載されています。
正当事由とは、簡単に説明すると正当な理由(要因)と言えるでしょう。
正当事由は5つ アパート立ち退き交渉をする上でしっかり知っておきましょう
正当事由に関する条件が満たされていないなら、オーナーがアパートの建て替えやそのほかの理由で賃借人の立ち退きを望んでも実現することはできません。
正当事由には、以下の5つの要因が関係しています。
- 建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情がある事
- 建物の賃貸借に関する従前の経過
- 建物の利用状況
- 建物の現状
- オーナーが建物明け渡しの条件として賃借人に財産上の給付を申し出た場合
上記の5つの要因をどのように満たすなら、アパートの賃借人(入居者)と立ち退き交渉ができるようになるのでしょうか?
まず1つ目の賃貸人又は賃借人が建物の使用を必要とする事情がある事は、次のように理解できます。
例えば、オーナーがアパートの建て替えを計画している場合、賃貸人はアパートの使用を必要としている事情があるとなり、立ち退きの交渉が可能となります。
しかし同時に、賃借人もアパートを必要としているため、1つ目の条件だけでは正当事由とは認められません。
そのため1つ目の要因を満たしたとしても、残りの4つの2次的な要因を加えて、正当事由があるかを決定する事になります。
2つ目の建物の賃貸借に関する従前の経過とは、これまでの賃料額や賃貸人と賃借人との関係性など、契約期間中の事情という意味です。
3つ目の建物の利用状況とは、賃貸借契約に従って賃借人がアパートの部屋を利用しているかという意味です。
4つ目の建物の現状とは建物の状態という意味であり、老朽化がひどく進み危険がある場合などは、条件に適う事になります。
逆に若干老朽化が進んでいるものの、居住に問題がなければ4つ目の要因には当てはまらないという事になるでしょう。
最後の5つ目は、賃借人が立ち退く代わりに迷惑料や立ち退き料という財産上の給付をするという意味です。
この要件があるため、アパートの入居者と立ち退き交渉をする際は立ち退き料を準備する必要があるわけです。
では、立ち退き料を支払えば、正当事由があると判断されるのでしょうか?
そうではなく、他の要因だけでは正当事由としては不足している場合に、立ち退き料を準備する事で正当事由として認められる事もあるという意味です。
例えば、アパートの老朽化は進んでいても居住に問題がなければ、要因としては弱いため、立ち退き料(財産上の給付)を用意する事で正当事由とみなされる可能性があるという事です。
いずれにしても立ち退き料の用意は、アパートの入居者と立ち退き交渉をする際に重要な要素になります。
正当事由として認められるためには、いろいろな条件に適っていなければならないんですね。考えてみた事もありませんでした
オーナーが正当事由の理解ができていないと、法律に従って交渉できないため、大きなトラブルに発展することもあるので注意しなければいけませんね
では立ち退き料の決め方について見ていきましょう。
アパート立ち退き料の相場や決め方とは?
立ち退き交渉をするオーナーの中には、立ち退き料の金額や相場を知りたいと思われる方も少なくありません。
しかし立ち退き料は賃借人との交渉によって決まるものであり、さらに現時点での家賃によっても変わるものであるため、 決まった相場は存在しません。
とはいえ、立ち退き料を決まるための一定の考え方というものはあります。
アパート立ち退き料の内訳
立ち退き料の金額を決めるのに、以下のような費用を参考にすることができます。
- 新居への引っ越し代金
- 新居の敷金・礼金・不動産仲介料
- 迷惑料(損失料)
上記の3つの費用は、立ち退き料として必ず必要になるわけではありません。
借主によっては、引越し代金のみで納得してくれる人もいれば、立ち退きによって精神的な苦痛を感じたとして迷惑料を要求する人もいます。
ですから、どこまでの金額を準備するかは、借主との交渉次第と言えるでしょう。
ここで重要になるのは借主との交渉術ですが、詳しい方法については後述します。
まずは立ち退き料について、もう少し詳しく紹介していきます。
3つの費用のうち、引越し代金や新居の敷金や礼金などは分かりやすいですが、迷惑料や損失料とはなんでしょうか?
例えば、立ち退きによって生じる損失には、現在の家賃と新居の家賃の差額もあります。
現アパートの家賃が月6万円で、新居が月8万円であれば、毎月の損失は2万円となります。
一般的には、家賃の差額が生じてしまった場合、オーナーの都合で立ち退きをお願いしたため、差額の1年~1年半ほどの金額を保証する事もあります。
迷惑料とは、住居が変わってしまうことによって生じる感情的・精神的なストレスへの補償として考えることができます。
「今回はこちらの都合で迷惑をかけるので」と言って、プラスアルファを少し加えるなら、借主の気持ちも和らぐかもしれません。
借主が納得するアパート立ち退き料の金額とは?
先ほど立ち退き料の相場は存在しないと説明しましたが、多くの借主が納得する価格帯というものはあります。
自分が立ち退く側だったら、どれくらいの金額を貰えれば、ある程度納得できるのか考えてみると良いでしょう。
家賃の金額によっても変化しますが、一般的にアパートで生活している入居者の多くは50万円~100万円の立退料を準備すると納得するといわれています。
この金額は、平均的なアパートの家賃の5か月~半年ほどの金額と考えられます。
現時点での家賃を参考に、借主が納得できるような金額を準備するようにしましょう。
では借主の方に落ち度があるために、アパートから退去させる場合でも、上記のような半年分の家賃を準備しなければならないのでしょうか?
借主に過失がある場合はアパート立ち退き料が安くなる
もし借主の問題によって立ち退き交渉をするのであれば、立ち退き料はかなり低くなります。
状況によっては、立退料が無料になることもあります。
借主側の過失には、どのようなものがあるのでしょうか?
- 借主が賃貸借契約に違反
- 家賃の滞納が続いている
- 目的以外の理由でアパートを使用
- 借主によってアパートに損害が生じている
上記のような状況が見られ、オーナーが立ち退きを望む場合、交渉次第で立ち退き料は0円になる可能性が高くなります。
但しすでに家賃の滞納が生じているため、場合によっては家賃の未払い分を回収できない可能性もあります。
さらに立ち退き通知に全く応じず、アパートに居座る人もおり、借主に過失があるにも関らず、立ち退き料を準備して出て行ってもらう可能性もあります。
非常に理不尽な状況ですが、家賃の支払いが今後も長期的に行われないよりは、立ち退き料をわずかに支払って、出て行ってもらう方が良いかもしれません。
立ち退き料はやっぱりかなりの金額になってしまうんですね
オーナー側の都合で借主の生活を大きく変えてしまうので、一定金額の立ち退き料を準備することが必要になります
それでも正しい立ち退き交渉を行うことで、立ち退き料の金額を抑えることは可能です
では引き続き、立ち退きを成功させるための交渉術について見ていきましょう。
借主との交渉を成功させるためのアパート立ち退きの交渉術とは?
立ち退きを成功させる交渉術の基本は、借主の気持ちや状況を考える事です。
- 新居への移転のどんな面に不安を感じているのか
- 経済的な損失はどれくらいなのか
- 引越しをするデメリットは何か?
借主に関して上記のような内容を考えるなら、立ち退きを成功させる交渉を行っていくことができるはずです。
借主の方の気持ちや状況を理解してあげることが大切な交渉術なんですね
どれだけ借主に寄り添えるのかが、立ち退きのスピードにも大きく影響します
これからどのように借主の気持ちに寄り添えるのか具体的な交渉術を紹介していくので参考にしてください
アパート立ち退きまでの時間に余裕を持たせる
誰であっても、数か月後に引っ越してくださいと一方的に言われたとしたら、混乱するかもしれません。
また今後の生活を考えて、「新しい家は見つかるのか」「時間的に間に合うのか」と不安を感じる可能性は高いでしょう。
ですから借主の方が、満足できる新居を探す時間の余裕を持てるように、アパート建て替えを計画しているなら立ち退きについて早めに通知しましょう。
可能であれば、立ち退きの1年前に通知ができると良いでしょう。
「まだ1年ある」と思ってもらえれば、「立ち退き料までもらえて良かった」と感じてもらえるかもしれません。
借主の方の心に余裕があれば、オーナーからの提案を受け入れやすくなるので、交渉の成功率は上がっていきます。
立ち退き後の具体的な新居の提案をする
立ち退きについて交渉する時は、事前に近隣の同じような家賃のアパート情報を調査し、交渉時に具体的な物件の資料を提供するようにしましょう。
立ち退きについて聞いた借主の方は、「物件が見つかるだろうか?」「同じ程度の家賃のアパートがあるのか?」と心配するものです。
ですから立ち退きについての説明を聞いた時に、新しい住居の候補を提供してもらえると安心できます。
実際に提供された物件に決めるかは借主次第ですが、少なくとも借主は同レベルのアパートの家賃相場を把握することができます。
忙しい借主の方にとっては、自分でアパート情報を調べるだけで負担になる事もあるので、オーナー自ら調査をしておくなら借主の負担軽減につながります。
立ち退き交渉をスムーズに進めるため、必ず新居(周辺アパートの情報)の情報を準備してください。
「オーナーは自分の生活のことをしっかり考えてくれている」と借主の方に思ってもらえれば、交渉はよりスムーズに進みます。
立ち退き後に現在の敷金を返金する
オーナーの都合でアパートからの立ち退きを行うので、敷金を返還することも検討できます。
オーナー都合による立ち退きであれば、借主にとっては必要のない移動であることを覚えておきましょう。
もし敷金が返還されないとしたら、借主の不満の原因となり、立ち退きがスムーズに進まなくなる可能性があります。
ですから立ち退き交渉の際には、「今回はこちらの都合で移動していただくので、敷金は全額お返し致します」と伝えると良いでしょう。
立ち退き交渉で難しそうな方を後回しにする
アパートの入居者の性格や状況は様々であるため、すべての方が同時に立ち退きを受け入れてくれるわけではありません。
オーナーの中には、すべての方が同時に立ち退きを了承してくれるように交渉する方もいますが、その必要はありません。
仮になかなか同意してくれない借主に合わせてしまうと、次のような弊害が起きる可能性があります。
- 問題のある借主と他の入居者が結託してしまう
- 時間だけが進み、ほとんどの借主からの同意が得られない
- 団体交渉のような状態になる
- 一律の立ち退き料となり、総額が増えてしまう
アパートの借主すべてにとって立ち退きも受け入れづらい提案です。
しかしすべての方が同条件を提示してくるわけではなく、非常に低い立ち退き料で納得してくれる方もいます。
とはいえ全員に対して同時に立ち退き交渉をすると、他の方の立ち退き料と同じ金額を要求される可能性も出てきます。
ですから交渉が難しい方は後回しにして、交渉がまとまりそうな方から進めてしまいましょう。
最終的には新居に関係する費用も負担も検討する
入居者の立ち退きに関して、オーナーにとって最悪の結末は、予定日までに立ち退きが完了しない事です。
立ち退きが進まない原因は、主に以下の3つです。
- 借主にとって経済的な損失が大きい
- 立ち退き交渉が一方的で借主は感情を害している
- 今後の流れが不透明で不安を感じている
借主が立ち退きに際して、負担する事になる費用について考えてください。
上記の3つの原因の中でも、金銭的な損失は借主にとって大きな問題であり、少なくとも以下のような出費が、予定外の立ち退きによって発生してしまいます。
- 新居への引越し費用
- 引越し中の食事代
- 新居の敷金や礼金、不動産仲介料
- 有給休暇の消化
「上記のような出費のすべて、もしくは一部を負担させてほしい」と交渉時に提案するなら、借主の経済的な負担という不安を払拭することができます。
さらに経済的な負担の軽減だけでなく、借主は「オーナーはきちんと自分のことを考えてくれている」と感じてくれる可能性もあります。
このようにすることで借主との不必要な衝突を避けられ、立ち退き交渉をスムーズに進める事につながります。
アパート立ち退きの理由をはっきり伝える
「〇月〇日までに立ち退きをお願い致します」という通知を受けるだけで納得できる人は少ないでしょう。
しかし立ち退きという面倒な事を受け入れるだけの十分な理由があれば、借主の多くは受け入れてくれる可能性があります。
例えば、正当事由には至っていないものの、アパートの老朽化のため立ち退きを進める時は、老朽化している箇所や危険性について明確に伝えることを意識してください。
自分が住み続けることで被害を受ける可能性がある事を理解できるなら、借主は立ち退き交渉に応じやすくなります。
交渉時に上記のような点を伝えないなら立ち退きは一向に進まず、借主が立ち退きを拒否し、最終的に裁判になる可能性も出てきます。
裁判による強制執行を行うには、時間も費用もかかるため、最も良い方法は借主との交渉によって立ち退きに同意してもらうことです。
とはいえ仮に大きなトラブルに発展してしまった場合は、アパート管理を行っている不動産会社や弁護士に相談する事もできます。
しかし実際の借主との交渉を行えるのは、オーナー自身か弁護士のみであり、不動産会社はオーナーに代わって交渉を行うことはできないので注意してください。
ここまででアパートオーナーの都合によって借主に立ち退きをお願いする時の必須情報を紹介してきました。
交渉を成功させるためには、入念な準備が必要であり、少なくとも半年から1年前には立ち退きについて通知するようにしましょう。
書面によって通知するだけで良いというわけではなく、借主を訪問し口頭で丁寧に説明し、誠実さを表す事も忘れてはなりません。
借主に対し立ち退きについて説明する時は、立ち退き料や新しいアパートの具体的な情報を提供する事も重要です。
立ち退き料には参考になる金額があるものの、相場は存在しないため、一人一人の借主の状況に合わせて具体的に決めていくことが重要です。
少しでも立ち退き料を安くしたいという気持ちは理解できますが、その気持ちを前面に出して交渉するなら間違いなくトラブルに発展するので注意してください。
立ち退き交渉で最も重要なのは、借主の気持ちや感情、状況にオーナーが寄り添うことです。
「自分の気持ちをオーナーは理解してくれている」と借主が感じられる時、立ち退き交渉はスムーズに進むことを忘れないでください。