ここ数年、経済成長めざましい東南アジア諸国の不動産投資が脚光を浴びています。東南アジアは、日本人にとって古き良き日本を感じさせる土地として知られており、非常に人気のある投資対象です。
また、「円」だけを保有するリスクを懸念して、リスク分散のために「外資」を持ちたいと海外不動産投資に興味を持つ方も増えてきています。
しかし、海外不動産投資を考える人にとって、どの国を選べばよいのかわからないもの。そんな方におすすめしたいのが、東南アジア諸国です。
ASEAN(東南アジア諸国連合)に加盟しているのは、インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオスの10か国。
これらの東南アジア諸国がここ数年凄まじい勢いで経済成長しています。きっと経済ニュースであなたも耳にしたことがあるかもしれません。
そこで今回は以下のような方のために、東南アジア諸国の海外不動産投資について整理しました。
- 東南アジア諸国の海外不動産投資に興味がある
- 東南アジア諸国の海外不動産投資が儲かるのか気になる
- 東南アジア諸国の海外不動産投資に関して注意すべき点を知りたい
東南アジア諸国の海外不動産投資にはどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
詳しく見ていきましょうね。
なぜ東南アジアの海外不動産投資が人気なのか
①日本の不動産投資は今後どう変わるのか
多くの方がご存じのように、日本はかつてバブル景気に沸いていました。1986年から1991年の4年半、日本の土地は買えば必ず価格が上がるといわれ、大きな富を手にした人が山のようにいました。
まるで奇跡ともいえる好景気の状況は「土地神話」という言葉が生まれるほど。面白いように土地の価格は上がり、1991年にピークを迎えるまで好景気は続きました。
しかし、残酷にもバブル崩壊が訪れます。上がり続けると思われていた土地の価格は瞬く間に下落。2001年からの10年間は「失われた10年」と呼ばれるほど不景気に見舞われました。
土地価格推移表<東京圏・全用途>
西暦 | 平均価格 | 西暦 | 平均価格 |
1975 | 126,000 | 1998 | 410,300 |
1976 | 126,900 | 1999 | 380,300 |
1977 | 130,200 | 2000 | 354,700 |
1978 | 130,800 | 2001 | 336,100 |
1979 | 138,200 | 2002 | 373,900 |
1980 | 158,800 | 2003 | 360,200 |
1981 | 181,800 | 2004 | 350,600 |
1982 | 216,800 | 2005 | 347,300 |
1983 | 279,400 | 2006 | 358,200 |
1984 | 302,400 | 2007 | 410,800 |
1985 | 345,600 | 2008 | 476,400 |
1986 | 488,300 | 2009 | 441,600 |
1987 | 807,300 | 2010 | 397,400 |
1988 | 1,092,700 | 2011 | 394,100 |
1989 | 1,083,300 | 2012 | 386,800 |
1990 | 1,122,200 | 2013 | 387,300 |
1991 | 1,155,500 | 2014 | 417,000 |
1992 | 1,089,100 | 2015 | 432,900 |
1993 | 846,700 | 2016 | 448,400 |
1994 | 665,100 | 2017 | 479,200 |
1995 | 555,100 | 2018 | 504,700 |
1996 | 474,900 | 2019 | 533,300 |
1997 | 430,600 | 2020 | 561,400 |
その後、土地価格は緩やかに回復しましたが、2008年のリーマンショック、そして2011年の東日本大震災によって土地価格は再び下落。ようやく2013年以降に回復し始めて、現在まで続いています。
緩やかに回復してきてはいるものの、決してバブル時代のような華やかな上昇率を見せることはありません。
日本の土地価格はすでに緩やかな上昇と緩やかな下落を繰り返す低成長時代に移行しており、バブル時代のめざましい経済成長を望むことは難しいといわれています。
EU諸国をはじめとする先進諸国と同様、日本経済は低成長の道を歩き始めています。
②日本はキャピタル・ゲインが期待できない
そんな日本の経済成長率は、2016年の段階で「GDPにおける経済成長率1.032%」と報告されています。
1年間に約1%しか成長しない状態が続く日本。いざなぎ景気が18.4%、バブル景気が7%の成長率です。
ここで、GDPの経済成長率の分だけ1年後の貯金が増えると考えてみましょう。100万円を貯金した場合、いざなぎ景気は18万4千円、バブル景気では7万円、現在は1万円プラスになる計算です。
いかに利益の差が出るかをおわかりいただけますでしょうか。
経済成長率約1%の日本では、もはや不動産投資によるキャピタル・ゲインは期待できないという認識が広がっています。
ところが、東南アジア諸国の経済成長率はどうでしょう。下記の経済成長率ランキングをご覧ください。
経済成長率ランキング
順位 | 国名 | 成長率(%) |
1位 | バングラデシュ | 7.18% |
2位 | インド | 7.18% |
3位 | カンボジア | 7.04% |
4位 | ラオス | 7.02% |
5位 | フィリピン | 6.92% |
6位 | 中国 | 6.70% |
7位 | ブータン | 6.23% |
8位 | ベトナム | 6.21% |
9位 | ミャンマー | 6.12% |
10位 | インドネシア | 5.02% |
バングラデシュ、インド、カンボジア、ラオスの4国では、経済成長率7%を超えています。
東南アジア諸国をピックアップすると、カンボジア、ラオス、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、インドネシアの6か国がランクイン。ランキング10位中6か国を東南アジアが占めていることからも、その勢いを感じていただけるのではないでしょうか。
このような劇的な成長率を世界の投資家が見逃すはずがありません。
現在、東南アジア諸国には、さまざまな国から投資の手が伸び、海外企業の参入や都市開発が急速に進んでいます。
そして、こうした経済成長率の高い国ではインフレの発生が付き物です。
インフレとは
モノの価格が上昇すること。不動産をはじめとするモノの取引が頻繁に行われるようになればモノの価格が上昇します。
逆に、経済成長率の低い国ではデフレが発生します。
デフレとは
モノの取引が頻繁に行われなければ価格が下がる、それがデフレ現象です。
今の日本の経済成長率をご覧いただければ、もうご理解いただけるでしょう。
デフレが起これば不動産価格も下落する、こうした環境ではキャピタル・ゲインは見込めません。
③不動産転売はインフレを狙え
キャピタル・ゲインとは
不動産価格が上昇することによって転売時に売却益を得られることを指しています。モノの価値が上昇するインフレ時は、不動産転売によるキャピタル・ゲインも期待できます。
しかし、日本は約1%の経済成長率。国内不動産投資でキャピタル・ゲインを得ることは、もはや難しい状況にあります。
一方、東南アジア諸国はインフレの真っ只中。不動産価格は上昇傾向にありますから、不動産投資によるキャピタル・ゲインは十分に期待できます。
さらに、東南アジア諸国は日本から飛行機で4時間前後という近い距離。海外不動産投資の対象として東南アジア諸国は非常に魅力的であり、人気が急上昇するのも無理はありません。
それではさっそく、東南アジア諸国に海外不動産投資するうえでの、メリットとデメリットを見ていきましょう。
よろしくお願いします!
東南アジアに海外不動産投資する3つのメリット
経済成長めざましい東南アジアですが、今なお貧困イメージは払拭されていません。本当に海外不動産投資をするメリットはあるのでしょうか。
3つのメリットについてひも解いていきます。
①キャピタル・ゲインが期待できる
ほとんどの東南アジア諸国では、都市部に人口が集中しています。
なかでもカンボジアは比較的業種規制が緩く、企業が進出しやすい状況。外資100%で企業が参入しやすいため、東南アジア諸国の中でも経済成長のスピードが速いといわれています。
海外企業の参入もあって、海外や地方から都市部へと人口が集中。その爆発的な人口増加から不動産需要が高まり、不動産価格が上がりやすくなっているのが特長です。
だからこそ、日本の不動産投資では夢となった「安く買って高く売る」というキャピタル・ゲインが期待できるのです。
そのうえカンボジアは送金規制がなく、投資で得た利益を日本や他国に送金することが基本的に可能という魅力もあります。しかも米ドルを使うことができるので、不動産投資で得た収益の回収をすべて米ドルで行うことができるのです。
現地の銀行に預ければ5~6%の利息が米ドルでつくため、賃料振込に現地銀行を利用すればダブルインカムを得ることができ、投資家にとっては非常に魅力のある不動産市場になっています。
②高い利回りが期待できる
このように経済成長が著しい東南アジア諸国は、近年、都市部に人口が集中するようになりました。人口集中に合わせて、みるみる賃料が上昇。
一方で日本よりも土地の価格が安いため、投資額と回収額に大きな差が生まれて高い利回りを期待できるのです。
カンボジアであれば、売却益に課税されないという魅力的なメリットがあります。
今後、税制が変わる可能性もありますが、現在は売却益を課税によって減らすことなくすべてを利益として得られます。
一方、台湾のように土地価格が上がり続けている国では、日本よりも利回りが低くなっているのが実情です。キャピタル・ゲインの高い国は、いずれインカム・ゲインも低くなると覚えておきましょう。
キャピタル・ゲインも高い利回りも得られるという状態は、基本的には矛盾しているので長くは続きません。東南アジア諸国のように経済成長がスタートしたばかりの国に限られた現象だと考えておくと良いでしょう。
カンボジアの不動産投資事情5つのポイント
- 送金規制がなく、投資で得た利益を日本に送金できる
- 米ドルが使えるので、投資で得た収益を米ドルで回収できる
- 現地銀行に預けると5~6%の利息がつく
- 賃料の振込先を現地銀行にすると、ダブルインカムが期待できる
- 売却益に課税されない
③相対的に安価である
経済成長率7%を超えるバングラデシュやカンボジアですが、決して豊かな国になったわけではありません。
経済成長の恩恵を受けられているのは、ごくわずか。カンボジアにおいては人口の35%が1日1ドル以下の生活という話も聞こえます。
そのため土地代、材料費、労務費は他国よりも安く、相対的に不動産価格が安く抑えられることが特長です。先進国なら手が届かないだろう高級物件も、今の東南アジア諸国であれば手に入れることができるでしょう。
しかも、不動産価格が上昇傾向にある今なら、高い利回りを見込むことができるという計算です。日本のみならず世界各国からの投資が集まり、不動産だけでなく株式市場も高騰しています。
もちろんメリットばかりではありません。次は、東南アジア諸国への海外不動産投資におけるデメリットを見てきましょう。
東南アジア不動産投資の3つのデメリット
東南アジア諸国ではハイリターンが期待できるとわかりました。
しかし、日本とは伝統も文化も異なる国。東南アジア諸国に海外不動産投資する際に、気をつけておきたいデメリットについてご紹介します。
はい!
①情報が入りにくい
海外不動産投資は、情報が得にくいことがネックです。これが日本国内であっても遠方投資は難しいもの。
たとえば東京に住んでいる方が京都に不動産投資をするとしましょう。東山区と中京区を挙げた場合、それが京都のどこにあり、どんな建物が建っていて、どんな云われがあるのか、どんな層が住んでいるのか、土地の価値を瞬時に見抜ける方は非常に少ないと思います。
地元の情報は地元の人にしかわからないもの。もし綿密な事前調査をせずに投資へと踏み切れば、大きなリスクを背負うことになってしまいます。
このように不動産投資は、地元の情報がなければ投資の良し悪しを判断できません。
商習慣や立地情報がわからなければ、不動産投資に適した土地を探し出すことができないのです。それが海外ともなれば、なおさら頼りになる情報が得にくくなるでしょう。
②未成熟ゆえのカントリーリスク
急成長する東南アジア諸国は、カントリーリスクの高さが難点です。
政治が不安定であるため政策や税制が変化しやすく、中には外国人規制が厳しい国もあります。インフラの問題も見逃せません。道路事情は未だ整わず、電車は限られた本数。ようやくバスが通ったり、信号が増えたりという開発段階です。
治安も決して良いとはいえません。東南アジア諸国に行けば私たちは外国人。投資する場合は、東京でいえば千代田区や港区といったわかりやすい都市部を選ぶことがリスクヘッジになるでしょう。
東南アジア諸国はまだ成長期ですから、日本の常識である修繕積立金の概念がなかったり、工事の精度に問題があったり、というすれ違いは日常茶飯事。一つひとつの価値観や常識をすり合わせていくのに時間がかかるため、日本の感覚でスムーズに進めることはできません。
不動産投資の利益を得るまでに時間と手間がかかるものと考えておいた方が良いでしょう。
日本の常識は通用しません。
東南アジア諸国の政治、経済状況、国民性といったカントリーリスクの高さを理解して海外不動産投資に臨む必要があります。
③キャピタル・ゲインが少ない
予想以上にキャピタル・ゲインが少ないというのがデメリットの2つ目です。
年間10%程のキャピタル・ゲインが得られる物件でも、倍以上に跳ね上がる状況は今のところ考えにくいでしょう。東京の土地価格が1年で倍近く跳ね上がったバブル期の日本と比べてはいけません。
バブル期のようなキャピタル・ゲインを期待すると肩透かしに遭ってしまいます。
日本のバブル時代は、高度成長期を経て先進国といわれるほど発展した後、国民がさまざまな分野で投資したことで生まれた経済現象。いくら東南アジアが高度成長期にあるといっても、日本でいうバブル期のような内需拡大には届きません。
未だに貧富の差が激しく、国民に投資できる余裕がないのも理由の一つです。日本の歴史に当てはめて考えれば、今の東南アジア諸国は1960~1970年代頃といえるでしょう。
バブル期に入る前ですから、バブル全盛期のようなキャピタル・ゲインは得られません。その点を踏まえず、バブル全盛期の日本に投資するイメージで東南アジアを捉えた場合は、期待したほどのキャピタル・ゲインが得られずに失敗した感覚に陥ってしまいます。
東南アジアに海外不動産投資するメリット・デメリット
メリット1 | キャピタル・ゲインが期待できる | デメリット1 | 情報が入りにくい |
メリット2 | 高い利回りが期待できる | デメリット2 | 未成熟ゆえのカントリーリスク |
メリット3 | 相対的に安価である | デメリット3 | キャピタル・ゲインが少ない |
ここまでは東南アジアへの海外不動産投資のメリットとデメリットをご紹介してきました。
詳しく知ると海外不動産投資はハイリスク・ハイリターンである、という印象を受けた方も多いのではないでしょうか。
やはり東南アジアは高度成長期。政治・経済ともに不安定な状態から抜け出せていません。
2018年にカンボジアで総選挙が行われた際には、情勢が変わる恐れがあるとの見込みから、世界の不動産投資家がカンボジアの不動産投資を控えた流れがありました。
このように、高度成長期にある東南アジアでは想定していない状況が訪れることも珍しくはありません。投資後に政治が変わったり、新たな制度が作られたり。
そこでキャピタル・ゲインが得にくい状況に陥ったとしても自己責任で終わってしまいます。「国内不動産投資も期待できない、海外不動産投資もリスキー。では、どこに投資すればいいの?」と思われるかもしれません。
もう一度、国内不動産市場について考えてみましょう。本当に国内不動産投資は期待できないのでしょうか。実は今、日本の不動産に海外投資家からの注目が集まっています。
なぜ海外投資家は日本の不動産に注目するのでしょう?
その状況や理由について詳しくご紹介します。
なぜ海外投資家が日本に注目しているのか
①カントリーリスクが極めて低い
ここ数年、日本の不動産投資に海外の投資家からの注目が集まっています。
理由の一つは「圧倒的な安定性」です。日本は諸外国と比べて、政治・経済が非常に安定している国として知られています。
「OECDカントリーリスク政策会合」によれば、2019年にアジアでAランクに評価されたのは日本とシンガポールの2国のみ。
国土交通省「平成30年度海外投資家アンケート調査業務」においても、海外投資家が高く評価する点として「不動産市場の規模76.3%」「不動産市場の安定性54.1%」「不動産市場の流動性48.6%」と安定性が挙げられています。
一方、諸外国はどうでしょうか。
ヨーロッパは、EU離脱をめぐり各国が大統領選挙で揺れています。アメリカはトランプ大統領の出現で、政策が180度変わるリスクを経験しました。
どんなに経済成長が進んだ先進国でも、大統領の交代などによってカントリーリスクが生じます。
一方、日本では2017年10月の衆議院選挙で自民党が圧勝。海外の投資家にとっては、こうした与党の強さが政治の安定性を感じさせているようです。
平成30年度海外投資家アンケート調査業務
「優れている」という回答割合が高い項目 | |
不動産市場の規模 | 76.3% |
不動産市場の安定性 | 54.1% |
不動産市場の流動性 | 48.6% |
不動産市場規模の拡大性 | 29.7% |
出典:国土交通省 平成30年度海外投資家アンケート調査業務報告書
②世界で最も治安の良い東京
カントリーリスクに加えて、治安の良さも高評価を受けている理由の一つです。
The Economist Intelligence Unitの調査「World’s Ten Safest Cities(世界で最も安全な10都市)」によれば、東京は2017年と2019年に1位を獲得しています。
日本は銃器の保有が法律で禁止されているのに加え、テロや殺人などの犯罪発生率が世界各国と比較すれば極めて低い国。勤勉かつ真面目という日本人の気質が、犯罪発生率の低さにつながっているのかもしれません。
治安の良さとカントリーリスクの低さは海外投資家にとって、投資の安全を保証する大きな指標。美しい自然に恵まれた平和な日本は、海外投資家にとってとても魅力的に映っているのです。
世界の都市安全性指数ランキング トップ10
2019年 | 2017年 | ||
1位 | 東京 | 1位 | 東京 |
2位 | シンガポール | 2位 | シンガポール |
3位 | 大阪 | 3位 | 大阪 |
4位 | アムステルダム | 4位 | トロント |
5位 | シドニー | 5位 | メルボルン |
6位 | トロント | 6位 | アムステルダム |
7位 | ワシントンDC | 7位 | シドニー |
8位 | コペンハーゲン | 8位 | ストックホルム |
9位 | ソウル | 9位 | 香港 |
10位 | メルボルン | 10位 | チューリッヒ |
③外国人への不動産所有規制がない
日本は外国人の不動産所有に関して規制を設けていません。日本人と同じように土地や建物の所有権を得ることが許されています。
しかも所有権は無期限で、売買も相続も自由。日本人と同様に不動産取得税がかかります。
一方、フィリピンやタイは住宅の購入ができても外国人名義で土地を購入することを禁じていますし、インドネシアやミャンマーに至っては外国人名義での不動産購入をすべて禁じています。
所有権が保証される日本は海外投資家にとって、投資の安全を感じられる環境といえるでしょう。
④アジア圏から近い
日本人にとって東南アジア諸国が近いと感じるのと同様に、アジアの富裕層にとって日本は距離が近く時差も少ない魅力的な投資環境として受け止められています。
近年は香港の政治情勢が不安定になったので、人民元のリスク回避を目的に海外不動産投資を考える中国人も増えています。香港で働くビジネスマンの中には、香港を離れて安全な日本に拠点を移したいと考えている方もいるそうです。
しかも、中国ではオンラインでの不動産投資が広がっており、現物を見ずに投資する方が少なくありません。
コロナ禍で来日できない今でも、アジアから日本不動産への投資が過熱化しています。
⑤新型コロナウイルス感染症の影響
不動産サービス大手企業「ジョーンズラングラサール(JLL)」は、2020年1月から9月にかけて、商業用不動産への投資額が最も多かった都市は東京と発表しました。
一方、新型コロナウイルス感染症が感染拡大したニューヨークは1位から5位、パリは2位から4位にランクダウン。
世界的に見ると日本は新型コロナウイルス感染症の影響が軽微であり、それが功を奏した様子。コロナ禍の今でも、東京には世界中から巨額の投資マネーが集まっています。
従来はオフィスへの投資が大部分を占めていましたが、コロナ禍の今はネット通販の拡大やリモートワークの普及を背景にして物流施設や賃貸マンションへの投資が増加。JILLは、2021年度も日本への資金流入が続くという予測を発表しました。
経済に大きな打撃を受けた欧米よりも、比較的安全な東京への不動産投資を選ぶ海外投資家が増えているようです。
不動産投資額の世界上位都市
2020年1~9月期 | 2019年1~9月期 | ||
1位 | 東京 | 1位 | ニューヨーク |
2位 | ソウル | 2位 | パリ |
3位 | ロンドン | 3位 | ソウル |
4位 | パリ | 4位 | 東京 |
5位 | ニューヨーク | 5位 | ロサンゼルス |
⑥国内投資家も注目する都心不動産
海外投資家だけではありません。国内でも都心の不動産人気が高まっています。たとえ分譲時の2倍近い価格で売り出されていても、問い合わせが殺到しているそう。
コロナ禍によって地方移住を考える人が増える流れに見えていましたが、郊外に住んでいた人が在宅勤務と出勤を経験したことで通勤時間がより少ない都心への移住を考えるようになったのです。
加えて、新型コロナウイルス感染症の影響で手放された不動産を狙う投資家の動きもあります。今なら好立地の都心不動産を相場よりも安い価格で手に入れることが可能です。
海外からも国内からも注目される日本の不動産投資。東京、大阪、福岡といった大都市への不動産投資が、今後過熱化することは言うまでもありません。
⑦小さな資金で大きな利益が期待できる日本
海外投資家が日本の不動産投資に注目する3つ目の理由は、イールドギャップの大きさです。
イールドギャップとは
利回りと金利の差のこと。イールドギャップが大きいと、小さい自己資金で大きな利益を得るレバレッジ効果が大きくなります。日本の賃貸物件は、このイールドギャップが大きいことで知られ、投資家から人気を集めています。
あなたがもし1,000万円の自己資金で不動産投資するとしたら、どんな違いがあるのでしょう。レバレッジ効果がある場合、レバレッジ効果がない場合で比べてみました。下記の一覧をご覧ください。
レバレッジ効果一覧
レバレッジ効果なし | レバレッジ効果あり | |
自己資金 | 1,000万円 | 1,000万円 |
物件価格 | 1,000万円 | 5,000万円 |
利回り | 10% | 10% |
年間収入 | 100万円 | 500万円 |
利息 | 0円 | 120万円 |
実質年間収入 | 100万円 | 380万円 |
利回りはいずれも10%という同条件で比較しています。自己資金1,000万円のみで投資用物件を購入した場合、実質年間収入は100万円に留まっています。
一方、融資を受けて5,000万円の投資用物件を購入した場合は、500万円の年間収入を得られます。利息を差し引いたとしても、実質年間収入は380万円。自己資金のみで購入した場合は年間100万円の収入ですから、融資を利用した場合は年間280万円のプラスとなります。
このレバレッジ効果が海外投資家の注目を集めている理由の一つです。キャピタル・ゲインが得にくい日本の不動産市場ですが、海外投資家にとっては安定して収入が得られる魅力的な市場として映っているようです。
また、不動産投資は突然の設備故障など想定外の出費も考えられますので、現実的に考えても自己資金をすべて投資用物件の購入に注いでしまうのはリスクがあるでしょう。
日本国内の不動産投資でも十分利益を得る方法はあります。東南アジアへの海外不動産投資に挑戦する前に、国内不動産投資を見直してみてはいかがでしょう。不動産投資に不慣れな場合は、日本国内で不動産投資の経験を積むことも大切です。
⑧キャピタル・ゲインを得る方法はさまざま
キャピタル・ゲインは不動産投資に限らず、株の売買でも得られます。しかも株は不動産よりはるかに短期的にキャピタル・ゲインを得られます。キャピタル・ゲインは株、インカム・ゲインは不動産というように用途で分けてもいいでしょう。
最初から海外不動産投資に手を出して失敗してしまうよりも、まずは株と国内不動産で確実に資金を増やし、地盤を固めてから次にチャレンジしては。
資金を集めながら海外不動産投資の情報を集めることもできます。国内不動産投資に慣れた段階で、海外不動産投資に挑戦する方が安全かもしれません。
投資にはリスクが付き物。海外不動産投資に踏み出す前に一度、日本国内で本当に利益を生む手段がないかを探してみてください。
まとめ
海外不動産投資をする際は、事前にその国の政治や税制、商習慣を知ることが大切です。
逆に考えれば、日本の不動産投資については日本にいるからこそわかる情報がたくさんあります。かつてはバブル景気に沸いた日本も、今後は人口減少と超高齢化社会によって経済が縮小傾向にあることが予想されています。
しかも日本は世界的に見ても地震が多く、近年は地震や水害などの自然災害で大きな被害を受けています。こうした情報はその土地に住んでいるからわかること。
正確かつ新しい情報を得られない場合、東南アジア諸国への海外不動産投資はとてもリスキーになってしまいます。
また、海外には外国人の不動産所有規制を設けている国が少なくありません。東南アジアのタイ・カンボジア・ミャンマーで許されているのはコンドミニアムの所有のみ、インドネシア・フィリピン・ベトナムは戸建てとコンドミニアムのみ、マレーシアは土地と戸建てのみ、というように国によって制限が設けられています。
キャピタル・ゲインを得ることも難しいため、投資経験が浅い方には確実な国内不動産投資をおすすめします。国内不動産投資はキャピタル・ゲインは得にくいものの、イールドギャップが大きいため小さな自己資金で大きな収益を得るレバレッジ効果が期待できます。
コロナ禍の今は相場より安く購入できる物件も増えており、AIを駆使して投資物件を探す人も増えているそうです。
東南アジアの投資について学ぶことができました!
株のキャピタル・ゲインで元手を作るなど、投資のやり方はさまざま。この機会に自分に合った方法を見つけてみてはいかがでしょう。