マンション売却の現状渡しとは?メリット・デメリットと注意すべきポイント

マンション売却の現状渡しとは?メリット・デメリットと注意すべきポイント

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マンションを売却する際に現状渡しをするケースがあります。
売りたいマンションの状態や築年数、そして売主の意向によって現状渡しによる取引が選択されることがあるのです。

しかし気をつけないと現状渡しの取引後に、買主から瑕疵担保責任や契約不適合責任を追及されるトラブルが発生することがあります。

今回の記事では、マンション売却の現状渡しとは一体何なのか、現状渡しにはどんなメリットとデメリットがあるのかを解説していきます。
現状渡しでトラブルが発生しないように注意すべきポイントについても説明します。

こざかな生徒
こざかな生徒

マンションを売却するときに現状渡しはやめた方がよいと友人に言われたのですが本当ですか

現状渡しにはメリットとデメリットがあるので一概にやめた方がよいとは言えません。まずは現状渡しとは何かを理解しておきましょう

クジラ先生
クジラ先生
こざかな生徒
こざかな生徒

ぜひ教えてください

目次

マンション売却の現状渡しって何?原状との違いは? 

マンション売却をする際に現状渡しにするかどうか判断を迫られることがあります。
特に古いマンションやコンディションが悪いマンションを売るときに、不動産会社から現状渡しにしますか、と尋ねられるケースがあるので現状渡しが何を意味するのか理解しておきましょう。

マンションの現状渡しの意味 

現状渡しとは、簡単に言うと現在の状況のままマンションを引き渡すことです。

マンション売却では売買契約を結ぶタイミングと、物件を引き渡すタイミングが異なります。
売買契約の時に見たマンションの状態から何も変わらないまま引き渡すことを現状渡しと呼ぶのです。

現状渡しでは、マンションの設備が壊れていたり、窓の建付けが悪かったりしても修理せずにそのまま鍵の引き渡しをします。

マンションにおける現状渡しとは

不動産の現状と原状に違いはあるのか

現状と原状は似ているのでよく間違われる言葉ですが、どのような違いがあるのでしょうか。

原状とは賃貸物件に使われる言葉で、借主が入居したときの状態を意味します。

賃貸物件は大家の所有物であり、入居者は大家の所有物を借りて住みます。
借主が部屋に入居してから設備を壊してしまったとき、借主は大家の所有物を壊したことになります。

設備を借主の過失によって壊しているのであれば、引っ越すときに壊した設備を直して入居したときの状態へ戻さなければなりません。
退去する際に最初の状態へ戻すことを原状回復と呼ぶのです。

原状という言葉は賃貸契約のときに使用され、現状は不動産売却のときに使われる言葉です。

不動産業界でよく使われる間違いやすい言葉を表にまとめたので参考にしてください。

現状現在の状態のこと
原状元の状態へ戻すこと
現状渡し現在の状態のまま売却すること
原状回復賃貸物件から退去する際に、入居時の状態へ回復させること
引き渡し売買契約後に買主へ鍵を渡すこと
明け渡し賃貸物件から退去するときに大家さんへ鍵を返却すること

どれも似た表現ですが、意味が違うのでこの機会によく整理しておきましょう。

マンション売却の現状渡しはホントに現状でよいのか 

マンション売却で現状渡しをする場合、どの程度まで現状のままでよいのか疑問に思われるかもしれません。
壊れた箇所があっても本当にそのまま引き渡してよいのだろうかと不安になる人もいるでしょう。

現状渡しの程度は買主によって変わってきます。

給湯器などの設備が壊れていても買主が問題ないと言うのであれば、修理せずにそのまま引き渡しても問題ありません。
窓の建付けが悪い部屋や壁紙が剥がれている部屋があっても、買主がそのままでよいと言うなら直す必要はないのです。

逆に買主が給湯器は修理して欲しいと言ったり、壁紙の張り直しを要求したりするなら現状渡しは難しいでしょう。
買主によって基本は現状渡しでよいが、特定の箇所だけの修理を求めてくることがあります

どの程度現状でよいかは買主に左右されることを覚えておいてください。

現状渡しの際にハウスクリーニングは必要? 

現状渡しをする際にハウスクリーニングは必要でしょうか。
通常、中古マンションの現状渡しではハウスクリーニングは行いません。

退去をするときに常識的な範囲で掃除をしておけば、業者へわざわざ依頼してハウスクリーニングをする必要はないのです。

もちろん、ハウスクリーニングをしてはいけないというルールはありませんが、基本は買主が後から自己負担でハウスクリーニングをします。
ほとんどの買主は現状渡しで購入したマンションを、すぐにリノベーションしたり大規模リフォームしたりするので、売主がハウスクリーニングしたとしてもあまり意味がないのです。

不動産会社にハウスクリーニングをした方がよいか尋ねても、必要ないと言われることがほとんどです。

マンション売却で現状渡しするメリットとは? 

マンション売却で現状渡しするメリットは2つあります。

  • 余分なコストが必要ない
  • 早く売却できる

それぞれのメリットについて具体的に説明していきます。
買主にとってのメリットも合わせて考えてみましょう。

現状渡しは余分なコストが必要ない 

現状渡しは部屋の問題箇所を直す必要がないため修理コストがかかりません

一般的にマンション売却をする際は家の不具合を直してから引き渡しをします。
壁にヒビはが入っている問題や浴室でお湯が出ない問題を修理してから買主へ引き渡すのです。

部屋の破損箇所を手直ししなければ売りづらいので、売主は売却の際に修理へかなりの費用を掛けることがあります。
売主によっては修理費用を売却価格へ上乗せすることがありますが、相場より価格が高くなると人気がなくなるので全額を上乗せすることはできません。

現状渡しであれば修理費用を負担しなくてよいため、売却にかかるコストを抑えることが可能です。

築25年から30年以上のマンションは現状渡しで売却されることが多いです。
古いマンションは、修理をしなければいけない箇所が多いので修繕費用がどうしてもかさみます。
相場価格で売却すると修理費用を回収できず赤字になるため、現状渡しを選択する人が多くいるのです。

築年数が高いマンションは現状渡しをするメリットが大きくなることを覚えておいてください。

マンションの現状渡しをすれば早く売却できる 

現状渡しの別のメリットは、早く売却できることです。
修理を業者へ依頼しようとすると下記の流れになるため、どうしても売却までに時間がかかります。

  1. 修理業者の選定
  2. 複数の業者へ見積もり依頼
  3. 各社の見積もりを比較し1つの業者へ決める
  4. 工事の日程調整
  5. 工事開始

少しでも安い価格で良いサービスを受けるため、複数の業者へ見積もり依頼をする作業は欠かせません。
業者の選定作業に時間がかかることがあります。

依頼する業者を決めても、時期によっては日程調整が上手くいかないこともあるでしょう。
引っ越しシーズン前の2月や3月は業者の日程が空いていないので工事開始が遅れてしまうこともあります。

工事が終わらなければ不動産会社は売却のために部屋の写真を撮ることもできませんし、内覧会を実施することもできません。
修理をしない現状渡しであれば不動産会社はすぐに販売活動を開始できます

転勤や離婚などの理由で早くマンションを売却したいときには、現状渡しの方が早く売却できるメリットがあります。

現状渡しの買主のメリットもチェック

現状渡しは買主にどんなメリットがあるのかもチェックしておきましょう。

  • 引き渡し時の状態を確認できる
  • 安く購入できる

引き渡し時の状態を正確に確認することができるメリットがあります。

売主による修理やリフォームが入ると、買主が思っていたのと違った状態で部屋が引き渡されることがあります。
買主はもっと良い設備を導入したかったのに安い機器が取り付けられていた、選ばれた壁紙が好みではなかったという事態が起き得ます。

現状渡しであれば、買主の思い通りにリフォームや修理ができます。

問題箇所を直すついでに新しい設備や機能を部屋に導入したいという買主には現状渡しの方がメリットあります。

現状渡しであれば買主は相場より安くマンションを購入できます
売主による修理費用が上乗せされていない価格で買えるので、お得に物件を手に入れられるのです。

不動産売却で現状渡しするメリット

知っておきたいマンション売却で現状渡しするデメリット 

マンション売却を現状渡しでするデメリットは何でしょうか。
売主が知っておくべきデメリットについて考えてみます。
デメリットを知っておくと現状渡しをしない方がよいケースが分かるのでしっかり理解しておきましょう。

現状渡しによってマンション売却価格が安くなる  

現状渡しのデメリットは、売却価格が安くなってしまうことです。
マンションの修繕箇所を直さずにそのまま売るため、安い価格でなければ買ってもらえないのです。

購入希望者から問題箇所を理由に値下げを迫られることがあり、雨漏りするならもっと値段を下げて欲しい、ドアの調子が悪いならさらに数万円下げられないかなどと値引き交渉されることがあります。

結果として、現状渡しのマンションは相場価格より安い価格で売却されることになります。

しかし古いマンションは問題箇所があって当然の物件です。
最近は古いマンションを自分なりにリフォームしたり、リノベーションしたりして住むスタイルが人気です。

昭和時代のマンションが持つ独特の雰囲気をあえて望む人たちもいます。

築年数が高いマンションを購入する人は、最初から修理箇所があることや現状渡しになることを理解していることがほとんどです。
マンションによっては現状渡しにしても大きく売却価格が下がることはありません。
売却するマンションの特徴と市場の需要を考えて現状渡しにするか判断していきましょう。

現状渡しの買主のデメリットもチェック

次に買主のデメリットについてもチェックしておきましょう。
現状渡しですから買主は自分で修理をしなければなりません
修理すべき箇所と修繕費用を正確に把握しておくようにしてください。
リフォームやリノベーションをしている間は入居ができないことも覚えておかなければなりません。

買主のデメリットを知ると、売主は売買契約の際に修理箇所を正確に伝えておかなければいけないことが分かります。

不動産売却で現状渡しする売主と買主のデメリット

現状渡しにするときは家の問題点について買主としっかりコミュニケーションを取るようにしてください。

こざかな生徒
こざかな生徒

マンション売却で現状渡しをする際に、トラブルを未然に防ぐ方法があったら知りたいです

告知書と付帯設備表について知っておくとよいですよ

クジラ先生
クジラ先生
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マンションを現状渡しする際の告知書と付帯設備表の作り方 

マンション売却で現状渡しする場合、告知書と付帯設備表は必須です。
正確な告知書と付帯設備表を作成しているなら、買主が後から問題箇所を知らなかったとクレームを付けるトラブルを防げます。
告知書と付帯設備表とは何なのか、どのように作成したらよいかを解説していきます。

現状渡しをする際に作成する告知書とは 

告知書とは売主が把握しているマンションの問題箇所を買主へ伝える書面です。

物件状況確認書と呼ばれることもあります。
住居全般に関連した瑕疵のことが記載されている書類です。

告知書を作成することで、引き渡し後の瑕疵担保責任や契約不適合責任に関係したトラブルを防げます。
仮に瑕疵担保責任や契約不適合責任を追及されても、告知書があれば裁判で対応できます

告知書に含める内容は瑕疵に関する2点

告知書に含める内容は主に2つの点です。

  • 現状の瑕疵
  • 将来発生する可能性がある瑕疵

現在のマンションで売主が把握している瑕疵の内容を告知書へ記載します。
今までに発生した事件や事故などの心理的な瑕疵や、周辺環境に関連した環境的瑕疵について書いておきます。

売主が将来発生する可能性がある瑕疵を把握しているのであれば、告知書へ記載してください。
近くに新しい施設がまもなく建設されるので騒音や振動が予測されることや陽当たりが悪くなることなども含められます。

告知書には売却するマンションに関する消極的な情報ばかり記載されるような気がしますが、積極的な情報を記載することもできます。
例えば、今までにシロアリ予防工事をしたことや、給湯設備を新しくしたことなどを記載していけます。

過去の修理記録や瑕疵対策履歴を告知書へ書いておくなら買主へ好印象を与えられるでしょう。

告知書の重要な4つの記入項目

マンション売却の際に作成する告知書には4つの項目があります。

  • 建物
  • 土地
  • 周辺環境
  • マンション管理

各項目の内容を表から確認してください。

建物雨漏りの有無、建物の腐食や傾きの状態、アスベスト使用の有無、給排水設備の状態、耐震診断、リフォーム履歴
土地境界確定と越境の状況、土壌汚染や地盤沈下の状態、敷地内残存物の可能性
周辺環境騒音や振動の有無、臭気の有無、周辺環境へ影響を及ぼす施設の建設計画、電波障害の有無、事件や事故の履歴
マンション管理管理費増額や大規模修繕の予定

建物の項目で、リフォーム履歴を買主へのアピールに使うことができるでしょう。
給湯設備の修理や、畳張り替えの事実を書いておくと買主の印象が良くなります。

マンション一棟を売る場合に、土地の項目は重要になってきます。
以前に建っていた建物の残存物などがあるなら正直に書いておきましょう。
工場が建っていたなら廃棄物が残っているかもしれませんし、クリーニング業者の施設があったならドライクリーニングの薬剤が残っているかもしれません。
土壌汚染の可能性について知っていることを記載するようにしてください。

周辺環境では、車の騒音や近くの工場から流れてくる臭いについて書いておきます。
近くに高層ビルや大規模商業施設が建設される予定があるなら記載しておきましょう。

マンション売却で買主が気にするのが管理の項目です。

管理費や修繕積立金の増額が予定されているか、今までに大規模修繕はあったかなどを書いておくとよいです。

マンション売却の際に作成する付帯設備表とは

付帯設備表とは、売却するマンションの設備状況を明確にする書類です。
古いマンションは引き渡し後に設備に関するクレームや、トラブルが発生することが多いので付帯設備表が必要になります。

告知書は物件全体の欠陥や周辺環境の問題を買主へ説明する書面ですが、付帯設備表は部屋の設備だけに特化した書面です。

付帯設備表に含める内容は引き渡し時の情報

付帯設備表には以下の内容が記載されます。

  • 水回り設備
  • 居住空間の設備
  • 玄関や窓などの設備

どのような設備があるのか無いのか、あるとしたら設備は故障しているか正常に機能しているかなどが記載されます。
設備を使う上で買主が知っておいた方がよい情報も書いておけます。

覚えておきたい点は、付帯設備表は今の設備の状態を書く書類ではなく、引き渡し時の設備の情報を書くということです。
買主の要望で引き渡し時までに撤去する設備があるのであれば、付帯設備表には記載されません。

付帯設備表の3つの記入項目は正確に記載しましょう

付帯設備表には、前の項で説明した3つの設備について細かな情報が記載されます。
具体的にどんな情報が記載されるのか見ておきましょう。

水回り設備キッチン設備内容、浴室と洗面設備内容、トイレ設備内容
居住空間の設備空調設備内容、照明設備内容、収納設備内容
玄関や窓などの設備下駄箱、扉、カーテン、駐車場などの状態

水回り設備の項目では、キッチン設備に汚れや焦げ付きがあるかなどを記入していきますし、給湯器を何年使用しているかなども書いておきます。
シャワーや洗面蛇口から水漏れがあるときには正直に記載しましょう。

居住空間の設備には、冷暖房機器や屋内と屋外の照明設備について書いておきます。
冷暖房機器のリモコンが故障しているなら記載しなければいけませんし、2台あるうち1つの換気扇が壊れているなら記入しておかなければいけません。

玄関や窓などの設備に関しては記載する範囲が広くなります。

インターホン機器の状態やインターネット回線の内容について書いておけるでしょう。

瑕疵担保責任を負わない告知書の作成方法

瑕疵とは、売却する物件が通常有するべき品質や性能を欠くことを意味します。
売買契約後に買主が瑕疵を発見したときには、売主に対して瑕疵担保責任を追求し、損害賠償や契約の解除を求めることができます。

瑕疵担保責任は2020年3月末までの不動産取引に適用されます。
2020年4月以降は契約不適合責任が適用されるようになっています。

瑕疵担保責任と契約不適合責任の違いについては次の項で詳しく説明します。
いずれにしても瑕疵担保責任や契約不適合責任を負わない告知書を作成するには、全て正直に記載することです。

特に買主から追求されやすい下記の3つの瑕疵について気をつけて書くようにしてください。

  • 物理的瑕疵
  • 心理的瑕疵
  • 環境的瑕疵

それぞれの瑕疵に何が含まれるか表にまとめました。

物理的瑕疵雨漏りや耐震強度不足、部屋が傾いていること
心理的瑕疵自殺や殺人事件があった、火災があった
環境的瑕疵陽当たりが悪い、異臭がする、反社会的組織の事務所がある

瑕疵には上記以外に法律的な瑕疵というものがあり、取引物件が法令制限を受けている場合に適用されます。

しかし裁判では、法律的瑕疵は不動産会社の責任と見なされることが多いので売主はあまり心配する必要がありません。

瑕疵担保責任と契約不適合責任の違い

瑕疵担保責任と契約不適合責任にはどのような違いがあるのでしょうか。
契約不適合責任は、売却する物件が契約の内容に適合しないときに、売主の責任を追及できる仕組みです。
瑕疵担保責任では売主が知らない隠れた瑕疵について買主は責任を追及できませんでしたが、契約不適合責任では隠れた瑕疵に関しても場合によっては責任追及ができるようになっています。

契約不適合責任は瑕疵担保責任とは違う内容

契約不適合責任は買主の権利を今まで以上に強くしているのです。

2020年4月以降は新しく変更された契約不適合責任が適用されているので、引き渡し後のトラブルを避けるためにも、告知書と付帯設備表へ瑕疵情報を今まで以上に詳細に書いておかなければなりません。

マンション現状渡しで契約不適合責任が発生するって矛盾してない?

マンション売却を現状渡しでする場合、なぜ契約不適合責任が発生するのか不思議に思われるかもしれません。
現状渡しはマンションの問題点を買主が納得して購入するはずなのに、どうして契約不適合責任を負わなければいけないのか納得できないと思われることでしょう。

なぜ現状渡しでも契約不適合責任が発生するかというと、買主はあくまでも契約書に書かれている欠陥に合意しているのであって、契約書に書かれていない欠陥が後から発覚したら契約内容が不適合と主張する権利があるからです。

民法では買主に4つの権利が認められています。

権利の種類権利の内容
追完請求の権利契約書に含まれていない欠陥の修理を求められる権利
代金減額請求の権利欠陥が修理できないなら値引きを求められる権利
損害賠償請求の権利欠陥によって被った損害と、欠陥がなければ享受できた利益の補償を求める権利
解除の権利契約を解除できる権利

契約書に含まれていない欠陥が判明した場合、買主は上記の権利を行使することができます。
以上の理由で、現状渡しであっても契約不適合責任が発生してしまうのです。

契約不適合責任を負わないための3つのコツ

現状渡しの際に契約不適合責任を負わないためにできることは3つあります。

一つは、瑕疵を正確に伝えることです。
契約書に正確な告知書と付帯設備表を添付することで、買主が契約不適合を主張できないようにしておけます。
告知書と付帯設備表は非常に大切な書類になるため、不動産会社へ作成を丸投げしないように気をつけてください。

マンションの瑕疵は住んでいた人にしか分からないことがたくさんあります。

例えば、以前に雨漏りの修理をしていたかどうかは不動産会社の人では分からない点です。
もし不動産会社へ書類の作成を丸投げし、買主が住み始めてから雨漏りの補修跡を発見したら、売主が意図的に補修後を隠したと主張されて契約不適合責任を追及されかねません。

告知書と付帯設備表は契約不適合責任から売主を保護する重要書類ですから自分で作成してください。

契約不適合責任の免責を提案することも、契約不適合責任を負わないためにできることです。
買主と契約する際に、契約不適合責任を負う期間は3ヶ月だけという規定を含めたり、契約不適合責任を全面的に免責するとの規定を付けたりできます。

免責を付けなければ、引き渡しから10年は買主に責任追求権がありますし、買主が何らかの瑕疵を知ったら1年以内に売主に責任追及できるので注意してください。

現状渡しの際にインスペクションを活用することもできます。
インスペクションとは、建築士などの住宅の専門家が第三者的な視点から住居の安全性や劣化具合を調査するサービスです。
事前にインスペクションをすることでマンションの欠陥を洗い出すことができ、正確な告知書を作成することができます。
買主にとっても第三者の専門家が物件を調査してくれているので安心して購入できるメリットがあります。

こざかな生徒
こざかな生徒

マンション売却で現状渡しするときの注意点はありますか

知っておくと取引がスムーズにいく注意すべきポイントをいくつか紹介します

クジラ先生
クジラ先生

マンション売却で現状渡しする注意すべきポイントを紹介

現状渡しでトラブルが発生しないように注意すべきポイントを紹介していきます。
不動産会社が査定に来たときや、リフォームをすべきか迷うときに役立つ情報も説明します。

問題点をマンションの買主へ丁寧に説明する 

現状渡しでは問題点を買主へ丁寧に説明することが大切です。

買主にしっかり説明していないと、後から契約不適合責任を追及されることがあるので気をつけましょう。
古いマンションはある程度修理箇所が多いことを買主も分かっていますから、あまり心配せずに正直に問題点を伝えてください。

基本的にマンションリフォームは必要なし 

リフォームをして売った方がよいのか気になる方がいるかもしれません。
後から契約不適合責任を負うリスクがあるならリフォームをして売った方が安心だと考えるのです。

当然、リフォームをして問題箇所を無くしてから売却すれば契約不適合責任を負うリスクは減りますが、修繕費用がかさんでしまいます
修繕費用がかさむと売却金額もある程度高くしなければなりません。
買主によっては問題箇所があっても安い価格の方がメリットあると考える人もいます。

そのため契約不適合責任のリスク回避として安易にリフォームはする必要はありません。

迷ったときは不動産会社へ判断してもらう

現状渡しで売却するかリフォームをするか迷ったときは不動産会社へ判断してもらいましょう。

不動産会社は部屋の問題点を把握した上で、現状渡しとリフォームして売り出すのとどちらが賢いかを教えてくれます。

訪問査定を依頼するときに現状渡しの査定額が知りたいと言っておくと、担当者が現状渡しで売った場合と修繕した場合をシミュレーションしてくれるので便利です。

迷ったときに自分1人で決めないように注意してください。

不動産会社による訪問査定時の注意ポイント 

不動産会社が訪問査定に来たときに、マンションの問題部分をしっかり説明してください。

収納扉の建付けの悪さや、フローリングの剥がれなど小さな問題点も担当者へ話すようにしましょう。
不動産会社は部屋の状態を正確に把握した後に査定額を提示してくれます。

提示される査定額は現状渡しの査定額となるので、金額を聞いた後にそのまま現状渡しで売却するか修理して売るのか判断してください。

査定をする担当者に家の状態を正確に伝えないと、現状渡しにするかどうかの正しい判断ができなくなるので注意しなければなりません。

現状渡しでも家の不用品は撤去する  

現状渡しであっても家の不用品は撤去しなければなりません。
今のままの状態で引き渡すのが現状渡しだから私物やゴミはそのままでよいと考えるのは間違いです。
家の不用品は引っ越しの際に撤去し、引き渡しのときには私物やゴミがないようにしておきましょう。

現状渡しでも不用品はそのままにしてはいけない

どうしても不用品や粗大ゴミを撤去できない場合には、売買契約書にその旨を記載しておかなければなりません。

こざかな生徒
こざかな生徒

現状渡しの後に買主と揉めないように注意ポイントをしっかり覚えておきたいです

迷うことや分からないことがあれば不動産会社へ何でも相談してください

クジラ先生
クジラ先生

まとめ

マンション売却の現状渡しとは、現在の状況のままマンションを買主へ引き渡すことです。
部屋に何らかの問題箇所があっても、修理をせず現状のまま売却することを現状渡しと言います。

現状渡しをすることによって、買主は修理やリフォームの余分なコストを支払わなくてよいというメリットを享受できます。
部屋の修繕工事をしないので工事のために売却が先延ばしになることもありません。
現状渡しのメリットを考えると、修理箇所が多い古いマンションを売却したい人や、急いで物件を売却したい人におすすめの取引方法です。

覚えておきたいデメリットは売却価格が安くなることです。
問題箇所がそのままなので相場より価格を下げなければ売却できません。
現状渡しにした方がお得かどうか判断に迷ったときには、不動産会社へ相談するようにしてください。

この記事の監修・執筆者

未来不動産コンサルタント株式会社

代表取締役 小川 樹恵子

保有資格:不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸経営不動産管理士、FP2級、証券外務員2種、貸金取扱業務取扱主任者

【本サイト(鯨鑑定士の不動産売却・投資)のメイン監修者】2007年から2014年の間に、個人の不動産鑑定事務所ほか、住友不動産株式会社に勤務し、不動産鑑定評価実務や不動産売買の経験を積み、「不動産の鑑定評価から売却・購入までワンストップ対応!」をモットーに、2014年未来不動産コンサルタント株式会社を設立し、現在は、不動産鑑定・不動産売買のほか不動産実務等の講師なども務めている。

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