瑕疵保証の注意ポイント!サービス内容と新築と中古で変わる保証期間を説明

瑕疵保証の注意ポイント!サービス内容と新築と中古で変わる保証期間を説明

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目次

瑕疵と瑕疵担保責任って、どういう意味?

思い切って不動産(建物)を購入したはいいものの、入居してしばらく経ってから

「二階から少し異臭を感じたため、調べてみたら天井裏から雨漏りしてることが発見された…」

「引越しで家具を配置したあと、部屋の床が斜めに傾いてることに気がついた…」

知り合いや友達に「こんなことがあってね…」と話したら「それ、欠陥住宅だったんじゃないの?」と言われ、

えー!と慌てて販売元の不動産業者に連絡するも「契約時に弊社でも検査で発見できまなかった内容ですので、もう入居されたのですから、ご自身で修理されてください…」と言われてしまった!

このような住宅売買に関するトラブル事例は年々増加しており、住宅リフォーム・紛争処理支援センターによると電話相談件数は2018年時点で3万件を超える勢いになってきており、2020年時点ではさらに増加していることが推測されています。

瑕疵担保責任とは

住宅の欠陥相談数は年々上がっている

2013年2014年2015年2016年2017年2018年累計
総合相談件数24,21626,13628,63830,16328,14232,253323,928
新築相談15,20316,83118,78619,75918,00420,509223,217
リフォーム相談9,0139,3059,85210,40410,13811,744100,711
こざかな生徒
こざかな生徒

近年買主が「欠陥で悩まされている」という相談がどうしてこれほどまでに増え続けてきているのでしょうか?

理由として、不動産の売主・買主が瑕疵保証についての正しい知識を持ちあわせていない事が原因となっている可能性が高いからです。
まず瑕疵保証を説明するにあたって、瑕疵(かし)や、瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)という言葉の意味も理解する必要があります。

クジラ先生
クジラ先生

瑕疵とは

瑕疵とは
不動産売買においては建物に欠陥を抱えている状態で、モノ(不動産物件)に生じている欠陥や不具合のことを指し、それが一見しただけではわからない、隠されている状態で存在していることを表します。

瑕疵担保責任とは
瑕疵(キズや欠陥などのこと)を持ったモノを売った側が、その瑕疵を担保(たんぽ=債権者の損害を補うための保証)する責任を負うことが法律で定められています。

※この瑕疵担保責任については2020年4月に民法の改正があったことで、以降、瑕疵担保責任という言葉は使われなくなってきます。まだ改正されて間もないことと、改正法が実生活にまだそれほど馴染んでいない理由から、今回の記事では旧法での「瑕疵」の流れをそのまま説明していきます。改正後の法律に関しては後ほど記述します。

瑕疵と瑕疵担保責任を事例で解説

ここでわかりやすい実例を交えて、以下にこの関係を説明します。

Aさんは不動産販売業者で、Bさんは中古マイホーム物件の買主さんだとします。

BさんはAさんから中古物件を買い、入居したあとで天井裏から雨漏れしていたことを発見します。

BさんはそのことをAさんに連絡し、修繕して欲しいと申し出て修理を請求します。

Aさんはその請求を受けて、誠実に修理に応じました。

これで、Aさんは売買後に「瑕疵」を見つけ、Bさんは「瑕疵担保責任」を果たしたという流れになるわけです。

ところが、不動産売買においてはどのようなケースでもこんな風にスムーズに解決するかと言うと現実は決してそうではありません。それであれば、前述したように建物相談件数がこれほど増えているわけはないですからね。

どんなことが瑕疵になるの?

具体的に「どのような状態」が瑕疵になるのか、第三者が話を聞いただけでパッと判断できるケースは現実にはそう多くないということがほとんどです。

ちなみに新築の場合と中古物件の場合でも、この瑕疵という定義付けは違ってきますし、法律と買主様との感性・感覚とを比較しても、その意味合いや解釈の度合いも全然違ってきます。

この「買主さんの感覚と法律の定義・解釈との違い」が、第三者との間で認識としてズレていることなども相談件数の増加につながっているとみて間違いないでしょう。

それでは、瑕疵と瑕疵担保責任の言葉の意味が大まかに理解できたところで次を見てみます。

瑕疵保証って何を保証するの?

わかりやすく説明すると、建物の欠陥が発見されたときに売主が欠陥を手直しすることを約束する、となります。

ですが保証を約束するということと、売主が買主の要求・要望を実際に満たすこととは全く意味あいが違います。

「え、それだと保証の約束にはならないんじゃ?」と思われたでしょう。まさにその通りです。

ではここまでの説明で抜けていた「誰が」という部分に触れていきます。

瑕疵を保証するからには、それだけの根拠と資力がないとできない

先ほどのAさん・Bさんとの事例をみてわかる通り、建物の引渡しが終わったあとで買主が「売主からは知らされてなかった」瑕疵(欠陥)を発見したときに、売主がどんな事でも自費で完全に保証してくれるなら、そもそもこのサービスはいらなくなりますし相談も増えるわけがないのですが、現実は決してそうはいきません。

売主の負担があまりに大きすぎる事が問題に

いくら売主が瑕疵担保責任を負っているとはいえ、それが街の個人経営の小さな不動産業者だったり、地元の工務店社長だったり、もしかすると倒産寸前の経営悪化している不動産業者だったりするかも知れません。

またマンションなどの場合、その部屋「だけ」にある瑕疵を見つけたならまだましですが、実は瑕疵が建物全体に及んでいることが発見された場合など、売主は巨額の損害賠償を保証しなければならなくなってしまい、仮に裁判で勝訴し支払命令が下りたとしても、結果、売主は破綻を余儀なくされ支払い不能で終了というケースもありえる話です。

こういった様々なケースで請求先が倒産してしまったり、経営破綻してしまったり、どうしようもなくなって住宅相談センターに相談するしかなくなるというケースも少なくないのです。

そこで初めて、この瑕疵保証が有効な手段になってくるというわけです。

瑕疵保証では、先の例のように買主が瑕疵を発見した際に、直接売主に瑕疵保証を請求するのではなく、それを担保した「保証会社」に申告・請求するという流れに変わっていきます。

保証会社と検査会社が「瑕疵保証」を守っている

現実問題としては、売主の資産財力や営業規模によって、簡単で安価な補修にしか応じられなかったり、契約で詳しい引渡し時の状況や内容が記載されてなかったために

「この申告の内容は瑕疵ではありませんから保証はできませんね

「入居時から時間が経ってますしウチで検査したときは異状はなかったですから、これはお客さん側で起こした不具合じゃないんですか?」

などと突っぱねられてしまうことが実際は多く、売主が素直に請求を認めると大幅な出費を求められるわけですから、ここは必死に抗おうとするのは当然です。

なので普通にトラブルを引き起こす原因が非常に多い、この「保証の実際問題」を専門に解決するために、この保証会社が力を発揮している、という成り立ちがあります。

保証会社が瑕疵を保証できる効率的なシステムとは

この瑕疵保証サービスでは、買主さんの不安感や負担を軽減するだけでなく、売主にとっても先ほどの例に挙げたとおり、突然多額の損害賠償を自費で負担するリスクがなくなるため、お互いにとってのリスク解消のためにも必要不可欠なシステムとなっています。

また買主さんは、この瑕疵保証により通常よりも損害賠償請求の期間を長く設定できたり、事前に瑕疵の意味合いをしっかりと自分の目と耳で確認できるというメリットもあります。

保証会社が契約に立つことで「売買相手との不信感」などによる問題も、第三者として公正に仲裁することでかなり緩和・解消されていきます。

これらの理由から、不動産売買においては保証会社による瑕疵保証サービスの需要は急速に高まっていってるのです。

ちなみに保証会社は「保険」の部門を専門に受け持ちますので、実際に第三者検査にあたる機関は「検査事業者や検査機関」などと呼んでいます。
この検査事業者については後述します。

建物での瑕疵には具体的にどんな種類があるの?

こざかな生徒
こざかな生徒

瑕疵にはどんな種類があるのでしょうか?

建築物件においては、土地・建物の「何らかの欠陥」のことを表しますが、大きくカテゴリを分けると次の4つに分類されます。

クジラ先生
クジラ先生
4つの瑕疵の種類

物理的瑕疵

明らかに誰の目や感覚から見ても「欠陥」であると判断できる瑕疵です。

例えば、シロアリ被害、雨漏り、地盤の沈下、土壌が汚染されて油が浮いている、など、目に見えて指摘できる欠陥のことです。

環境的瑕疵

建築物や土地そのものが原因ではない、周囲の環境によって生じている瑕疵のことです。

これは主観や感覚といった「人により感じ方がまちまち」なもののため、判断は少し難しくなります。

例えば、騒音や悪臭、近所の施設(公害、反社会勢力住居等)など環境的瑕疵に含まれることもあります。

大事件を起こした関係者の近所だとか、よくトラブルを起こす住人、騒音を出す隣人などからの被害はこの可能性があります。

心理的瑕疵

顕著な例では「事故物件」が代表的です。事件や事故、自殺、いわくつきの居住など住むことに心理的なストレスを与える可能性の高い瑕疵などを表します。

これらの事情を把握・告知せずに引き渡すと、売主が後々になって損害賠償を請求されることもありえます。

なお、売却物件の場合ですと心理的瑕疵の告知義務は一般に5~6年ほどとされてます。

それ以上経過している売却物件の場合は普通物件として販売されている事がありますのでお互いに十分な調査が必要になってきます。

法的瑕疵

法律により不動産の自由な使用が制限されてしまっている瑕疵を表します。

例えば、都市計画法や建築基準法、消防法などに違反している物件や、法改正された以後に修繕や改築が必要となってるのに、今だにそれがなされていない中古物件などもこれにあたります。

これらの法律に違反した物件をそうとは知らずに買ってしまうと、その後に建て替えや建築ができなくなったり、申し込みの住宅ローン審査時点で融資が下りなかったりすることがあります。

事前に不動産に瑕疵がないかどうかを、買主もしっかりと確認しておく必要があります。

お互いに契約時に気づかなかった「欠陥」を最初に減らす努力が必要

売主はもちろんのこと、買主も契約前にこういった瑕疵がないのかどうか、十分に注意を払いながら売却・購入を進めていくことが重要です。

もし心配なことがあれば、心配ごとを箇条書きに記録しておき、不動産会社や仲介の担当者さんに遠慮なく聞いてみたり調査を依頼しましょう。

これらの瑕疵を事前に見つけ出すためには「相場から比べて非常に安かったから」などの理由で販売会社の営業を簡単に鵜呑みにはせず、実際に複数の会社へも査定依頼し、親身になって相談に乗ってくれる信頼できる不動産会社を余裕をもって選ぶことが大事です。

あまりに周りの相場に比べて安すぎる物件は確かに目を引きますが、このような瑕疵があることを知りながら黙っている売主も少なからずいます。買主は安い理由を、契約前に根掘り葉掘り聞き込んでおくことも重要ですね。

売主が負う瑕疵担保責任

新築と中古で保証期間に違いはあるの?

実は新築の場合と、中古物件を購入する場合とで「瑕疵保証」の内容も期間も変わってくるということを知っておく必要があります。

このあたりについての見解は、複数の法律があり、それぞれが複雑に絡み合ってるため全部を一度に説明するのは困難なのですが、ここではわかりやすくするために慣例的な流れのみを説明していくことにします。
(関連法規:民法・商法・住宅品質確保促進法・PL法・宅地建物取引業法 など)

新築の瑕疵保証期間と内容は?

新築の注文住宅の場合は、売主にとって最も基準が厳しい「品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)」が適用されることになっています。

第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、住宅の性能に関する表示基準及びこれに基づく評価の制度を設け、住宅に係る紛争の処理体制を整備するとともに、新築住宅の請負契約又は売買契約における瑕疵担保責任について特別の定めをすることにより、住宅の品質確保の促進、住宅購入者等の利益の保護及び住宅に係る紛争の迅速かつ適正な解決を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「住宅」とは、人の居住の用に供する家屋又は家屋の部分(人の居住の用以外の用に供する家屋の部分との共用に供する部分を含む。)をいう。
2 この法律において「新築住宅」とは、新たに建設された住宅で、まだ人の居住の用に供したことのないもの(建設工事の完了の日から起算して一年を経過したものを除く。)をいう。
3 この法律において「日本住宅性能表示基準」とは、住宅の性能に関し表示すべき事項及びその表示の方法の基準であって、次条の規定により定められたものをいう。
4 この法律において「住宅購入者等」とは、住宅の購入若しくは住宅の建設工事の注文をし、若しくはしようとする者又は購入され、若しくは建設された住宅に居住をし、若しくはしようとする者をいう。
5 この法律において「瑕疵かし」とは、種類又は品質に関して契約の内容に適合しない状態をいう。

引用元:抜粋(e-gov法令検索)

この品確法の第95条によると、住宅を作ったハウスメーカーや工務店などの施工会社に「新築住宅の引き渡しから10年間の瑕疵担保責任を負う義務」が定義されています。

この法律は地域性や建物の構造・規模に関係なく全国統一で定められた法律です。

新築瑕疵保証で支払われる保険金の内容例

(1)修補費用材料費、労務費等の事故を修補するために直接必要な費用
(2)仮住居費用・転居費用対象住宅の事故の修補のために、居住者が一時的な移転を余儀なくされたことによって生じる仮住居費用および転居費用
(3)損害調査費用対象住宅に事故が発生したことにより修補が必要となる場合に、修補が必要な範囲、修補の方法や金額を確定するための調査に必要な費用
(4)求償権保全費用保険金の支払対象となる損害が発生し、住宅事業者が他人に損害賠償の請求ができる場合に、その権利を保全する手続きを行うために必要な費用
*修補以外の方法(修補以外による履行の追完、代金減額、報酬返還、解除、損害賠償)により瑕疵担保責任に基づいて支出すべき費用(仮にその事故を補修した場合にかかる費用を限度とします。)も含みます。
  • JIOが事前に必要かつ妥当と認めた費用をお支払いします。
    ただし、「故意・重過失特約」により保険金をお支払いする場合は、(1)(2)(3)の費用が対象になります。
  • 住宅取得者の直接請求により保険金をお支払いする場合は、(1)(2)(3)の費用が対象になります。

新築ならどんな瑕疵でも直してもらえる?

ただし、この場合の「瑕疵」では重大な欠陥となる基本構造部に限って定義されています。

例えば地震や積雪・台風などによって倒壊する原因になる柱や梁(はり)などの主要構造部分の強度や、雨漏りを起こす原因となる屋根や防水機能、一定以上の基準を超えた床や壁の傾き、シックハウス症候群の原因となる化学物質の発生基準量などが規定されています。

例えばフローリング・仕上げ材などの傷やクロスなど内装のはがれ、傾きによらない建具のスキマや一部の床鳴りなどは、施工の上手い・下手の評価の基準にはなっても、それが即ち「瑕疵」ということにはなりませんので、買主も瑕疵という意味合いへの理解が必要です。

不動産業者から建売住宅を購入する場合は?

宅地建物取引業法では第40条によって売主に「瑕疵担保責任の義務」が定められており、引き渡し後の住宅については2年の瑕疵担保期間が設定されています。これは新築であっても中古であっても同様に適用されます。

ただし建売の場合では、築1年以上が経過している物件については扱い上「新築」とみなされないケースもあります。

例えば「モデルハウス処分価格」などの販売特約で購入する場合などは新築と比べ保証期間が変わる可能性もありますから、購入の前にしっかりと契約内容などを吟味して疑問点がないかを調べ、十分に納得してから購入するようにしましょう。

新築住宅・中古住宅メリットの比較検証

新築の場合では「主要構造部で10年間の施工保証責任、売買で2年間の瑕疵担保責任」を受けることができ、買主は最も手厚く保証を受けられるかたちとなります。

また、新築では建築確認申請などの行政検査を含む各種法規的なチェックが確実に行われますので、法的瑕疵の問題はこの時点で完璧にクリアできていることも大きなメリットといえます。

買主にとっては新築での購入が最も保証メリットも大きく、複数の法律保護の恩恵を受けられリスクが一番少なくて安心できることから、今でも新築住宅が一番の人気になっているのです。

築年数がやや古い中古物件の瑕疵保証期間と内容は?

最初に結論から言いますと「まちまち」だと言わざるを得ません。様々な要素や状況で適合する法律も変わってくるからです。

まず、中古物件は新築と大きく異なる点があります。中古物件の場合だと「品確法」が元々適用されていないというところが、新築との大きな違いになります。

とはいえ、近年品確法を適用した築浅物件の場合は保証検査済証と瑕疵保険付きのものも多くなっています。

品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)が施行された背景とは?

品確法の制定は平成11年という比較的新しい時期に施行された経緯もあり、その品確法の主旨は地震や台風などの自然災害によって、当初計算された設計値以下の強度しかない建物が多く施工されていた(いわゆる手抜き工事というものですね)ものが、震災後国内に多く見られたことから施行の構想が始まっています。

品確法は「建築設計図のとおりの誠実な施工と管理を行う必要性」から誕生した法律ですから、品確法が施行される以前に建築されていた物件(2021年現在で築20年以上になるとほぼこれに該当します)が数多く存在している話になります。

その当時頃に建てられたものにまで遡って現行法の品確法を適用するというのは、法律的な観点からも無効なことですし、販売業者にとっても一方的に不利すぎる内容となり、それだと売主の利益獲得は不可能となるため、事実上市場から売主がいなくなってしまうという結果をもたらしてしまいます。

なのであくまでも品確法は、新築住宅を取得するための「買主のための安心保証の最高特典」という位置づけで捉えておくと良いでしょう。

中古住宅の場合は瑕疵保証対象の判断が中々難しい?

中古物件の場合はどうしても築年数とともに「経年劣化」という要素が避けられません。

「瑕疵保証」については、実は保証期間の定めや法規的な定義が曖昧なため、住宅売買についての明確な法律的根拠がはっきりと定義されてないということも住宅相談が増える問題の一部となっています。

「これは経年劣化によるものだ」

「いや当初から瑕疵があったのが入居後に発見されたのだ」

など、たとえ裁判となったとしても買主・売主の相互の主張を立証できる基準や線引きなどがハッキリしていないため、主張もウヤムヤになり最後は買主が泣き寝入りするケースが多いのが実情だったというわけです。

中古物件の瑕疵保証期間と内容

売主が不動産業者のケース

売主が不動産業者である以上、宅地建物取引業法が適用されます。前述でも触れましたが通称「宅建業法」と呼ばれる法律で、同法よると第40条で瑕疵担保責任の定めがあり、引渡しした日から2年間の瑕疵保証期間を定めています。これに逆らうような契約内容を締結したり、保証期間を付けない代わりに格安で販売する、などの特記をしても法的には無効となります。

この場合買主に瑕疵があった際の請求権利が認められていて、修復費用の請求と契約解除の請求が可能です。

売主が個人のケース

この場合だと「業」として販売しているわけではないため、売主に対しては法律的な縛りや規定がかなり緩くなることを買主は理解しなければなりません。契約内容についても保証期間は定めないこともできますし、業者ではないので期間を拘束する根拠もないわけです。

なので「瑕疵申告は現状内見から1ヶ月以内」や「入居後3ヶ月間」など双方の話し合いで決めて契約するしかなく、逆に不動産業者と同じように2年間の保証期間を求めるなら、ほとんどの売主は売却を躊躇することでしょう。

また、個人売買での一番のメリットは売買で消費税が掛からないことが上げられますが、代わりに買主の瑕疵保証の法的な権利としては「修復費用の請求」ができるだけで、契約解除や経過費用についての損害賠償までを請求するのはなかなか難しいと言えます。個人対個人で売買契約をする時は、ほぼ全てが自己責任の範疇となります。

正確な知識と公正な判断力を持たないまま、消費税もかからないし安いから、という理由だけで安易に契約してしまうと、買主が購入後にとんでもない高額な費用を負担せざるを得ないリスクも負う可能性があることは肝に銘じておいたほうが賢明かも知れませんね。

個人売買の増加による新たなトラブルと懸念

この機会に個人売買についての見解を述べておきます。

最近の中古住宅売買のケースではいわゆるマッチングサイトなどを利用した、個人が不動産業者を通さずに自宅を直接販売するというケースも増えてきています。

このように市場売買方法も多様化してきた昨今で、多岐に渡る保証のトラブルを即時解決するためのインフラはなかなか素早い整備が難しいという問題があります。

こういうった事情もあり、中古住宅の場合、売買の背景や状況、築年数などによって適用される法律も状況によりその都度変わってくる、という結論になりますが、個人間売買の場合では特に強制力の強い法律の適用が困難な実情もあります。

個人間取引のケースだと、お互いに契約約款の内容の精度や法的根拠からなる明文化された契約方法によらないことも多く、言った、言わないなどの水掛け論からトラブルに発展する可能性も高いため、法律に疎い方だと思わぬトラブルに巻き込まれるリスクが最も大きい方法と言わざるを得ません。

こういった高額な住宅を個人間で購入する際は、できるだけ直接取引を避け、間に保証会社や検査事業者などを挟んで第三者を介して取引をすすめるように心がけましょう。

瑕疵保険ってどんな保険?

前述までの説明で、販売元である不動産業者や仲介業者が不動産物件を売る際に、法律的な根拠に基づいて引渡し後から2年間の瑕疵担保責任を負う、ということだけは大雑把に把握できたかと思います。

しかし現実問題として、不動産の瑕疵そのものについては法律で明確な定義がないということや、新築なら10年間の施工責任による品確法と、2年間の瑕疵保証期間が法律によって明文化されてはいるものの、

じゃあ実際に買主が「これは瑕疵だ!」と主張するようなものを発見したとしても、その瑕疵という事実を第三者に証明したり、復旧のための施工費用と損害賠償金を請求したい、となると、これは相当に骨が折れる作業になってしまうわけです。

売主が買主すべての主張をすんなり認めてくれて全額迅速に対応してくれるなら何も問題はないですが、実際問題、そんな理想の流れになることは非常に希です。

実際に買主の独力で保証を求めるのは困難

もし訴えるにしても、裁判までの手続きや瑕疵を立証するための根拠など法律家顔負けの正しい知識と調査なども自分で全部やらなければならなくなり、普通にお勤めの方なら、とても生活の合間でこのような一連の作業を迅速にやり遂げるのは現実的ではなく、かなりの困難を極めるはずです。

よく「欠陥住宅を掴まされた!復元に関しての費用を全額請求してやる!」と息巻く方を見かけることがありますが、それは現実には相当な茨の道、となるのです…。腕利きの弁護士さんをつけたとしても、それでも中々困難を極める道のりになることでしょう。

こざかな生徒
こざかな生徒

ではどうしたらいいのでしょうか…?

さて、そこで!この瑕疵保険がそうならないための大きな効力を発揮してくるというわけです。

クジラ先生
クジラ先生
既存住宅瑕疵保険

瑕疵保証を現実的に叶えることができるのが瑕疵保険!

瑕疵保険は、本来新築で建物を建てる場合に適用されていた特殊な保険で、冒頭でお話したとおり、買主から瑕疵を指摘された場合に、それを復旧するために売主、またはメーカーは瑕疵の程度にもよりますが、巨額な費用を負担して出費しなければならなくなります。

施工会社も売買業者も、ともに営利組織ですから多数の物件を引き渡した後で、たびたびこのような修繕費や費用を申請されて出費していたのでは、たちまち経営が悪化してしまいます。

これらの問題を現実的に解決するための方法が、瑕疵保険制度になります。瑕疵保険に加入するのは、売主でも買主でもない、第三者の検査期間が請負うことになるのです。

これで、万が一入居後に瑕疵が発見された場合に、この「瑕疵保険」を使い、売主の負担をなくして合理的に修繕や保証部分に関しての復元費用を捻出することが初めて可能になる、というわけです。

瑕疵保険は、売主、買主ともに負担と不安を解消するための最適で合理的な方法だということになります。

瑕疵保険に加入するのは、売主でも買主でもない、検査事業者

ちなみに、これらの瑕疵保険を取り扱っている検査機関では品確法による「第三者検査」も同時に請け負っています。

瑕疵保険にかかるまでの流れとしては、この第三者検査期間が売買前に建物を検査し、瑕疵の有無を調査します。

その結果、検査で瑕疵は発見できない(引渡しても問題がない品質水準である)と判断され、合格した建物についてのみ、ここで初めて検査事業者が瑕疵保険に加入し、売主・買主双方が瑕疵に対しての保証と費用負担を免れることが可能になるというシステムです。

そういう意味では、瑕疵保険とは「住居としての品質を確保している」という検査の結果、それに合格した証明と、それでも瑕疵が発見された場合に、金銭的な費用も保証することを約束されたセットでの保険だといえます。

このシステムにより、買主が入居後に自分で「これは瑕疵の疑いあり」と発見したことを自分で復元に向けて努力せざるを得ない…なんて必要もいらなくなる、というからくりです。

検査事業者は「検査と保証根拠作成」が専門の仕事なので忖度しない

この品質確認は、売買契約前に検査期間が入念に検査し判定しますので、もしその検査時点で「瑕疵の疑い」が発見されたなら、その時点で合格水準になるまで施工会社は手直しや修繕を行わなければなりません。

こういった検査での履歴なども検査会社は記録を撮り、詳しい調査報告書も発行してくれるので「すべてが丸く収まる」かたちになるわけですね。

施工会社だけの「自主検査」ではなく、専門知識と資格を持った調査専門の第三者からの「公的検査」である点も売主・買主ともに大きな安心材料になります。

代表的な検査事業者3社

この瑕疵保険の合理性と適合力の高さが業界で大きな評判となり、もともと新築だけに存在していたこの瑕疵保証制度(第三者検査期間による検査と瑕疵保証)が今では中古物件や個人間売買の間でも取り入れられるようになってきています。

品確法の施行以降、今ではこの検査期間が従来、設計・施工・売買だけだった建築業界に「信用と安心と信頼」をもたらすことになってきています。

瑕疵保険を取り扱う会社で、代表的な所を以下に3社ほどご紹介します。

瑕疵担保の保証期間について

民法では、明確な瑕疵の保証期間については「買主が瑕疵を発見したときから1年間」という以外に、実は詳しいケースでの定義はされていません。このため、各事業者によって契約内容で独自に定めるケースが多いのです。

ただし、新築の場合は前述のとおり10年間、宅建業法により2年間(新築を個人で売買するケースはないため)の定めはあるものの、中古の場合だと業者を介した場合でおおむね1年間

売主として建物を売却した場合だと「引渡完了日から3カ月以内に請求を受けたものに限り、売主が責任を負う」という慣例が一般社団法人不動産流通経営協会(FRK)により決められている程度です。

また、瑕疵があった場合の修繕費用や復元に関しての諸経費や契約解除請求方法など、取り決めはされていても実質的に実費を回収できる保証はないため、やはり第三者期間を通じて瑕疵保険の契約内容をしっかりと掌握しておくことが買主の対策としては不可欠です。

瑕疵保険の導入には、どのように臨むべきですか?

瑕疵担保を受ける買い手としての心がけ

検査事業者からの契約内容は売主・買主いずれの立場でもないため、偏って忖度しない公正な判断で契約を巻いてくれます。検査される内容や保証される内容とその期間は、ご自身で一つ一つを確認し記録にとっておくような心がけが大事です。

売り手としての心がけ

瑕疵保険の被保険者は、売主でも買主でもない「検査事業者」になります。検査業者は何かあったときには自社が保険請求される立場ですから、検査に対しては厳しい目線で公正にしっかりと検査を行います。

これは個人売買で検査事業者を導入する場合であっても同様です。

もし今後、瑕疵保証をリスク回避のために必須と思うのなら検査事業者に仲介してもらい、その旨をしっかりと伝えて介入してもらう必要があります。

その後、物件の検査が実施され品質を満たしていると判断されれば、検査事業者が保険に加入し保証が付きます。

もし、検査事業者が破綻や廃業したら保険はどうなる?

安心してください。その場合は、契約先の保険事業者から直接保証されるようになっています。誰かが破綻しても三方よしとなる合理的な保険ですから、住宅売買の際には検討必須となることをぜひ頭に入れておきましょう。

2020年4月から大きく変わった「瑕疵担保責任」

これまで不動産売買においても主役を勤めていた「民法」の舞台で、瑕疵担保について様々なことが述べられてきました。

しかし今回、2020年4月以降はこの民法ではなく「債権法」と呼ばれる法律によって、売買契約や不法行為に関する規定を大幅に見直されることになりました。

売買契約においては、それまでの瑕疵担保責任という考え方に代わり、新たに「契約不適合責任」という概念が誕生することになったのです。

これ自体は法律の話なので詳しくは割愛しますが、この民法の規定では瑕疵担保責任は「任意規定」とされていて、取引自体に売主への強制力を伴わないものだったのです。

それが今回の法改正で、契約の内容に適合しないものは消費者保護の観点から無効化または解約も可能であり、場合により追完請求(白紙に戻すための経費や実費の請求など)、代金減額請などの必要な請求もできるようになりました。

契約不適合責任

買主がとり得る手段の比較

改正前民法(法定責任説)改正民法
追完請求不可
代金減額請求不可(数量指示売買を除く)
解除契約をした目的を達成できない場合のみ可可(ただし、不履行が軽微である場合、不可)
損害賠償可(信頼利益に限定)可(履行利益まで可)

また、これまで契約締結時までに生じた隠れた(通常では発見できなかった)瑕疵に限っていたものも、改正後では「契約の履行時までに生じたものであれば契約不適合責任を負う」という解釈をされるようになります。

法改正後の瑕疵担保責任と契約不適合の違い一覧

瑕疵担保責任契約不適合責任
責任の性格法的責任(多数)契約責任説あり契約責任=債務不履行責任に統一
対   象特定物のみ特定物・非特定物問わず
瑕疵の範囲隠れた瑕疵
原始的瑕疵
隠れた瑕疵であるかは問わず
契約履行までの瑕疵
売主の責任無過失責任損害賠償は過失責任
損 害 範 囲信頼利益のみ信頼利益だけでなく履行利益も含む
対 抗 措 置契約解除
損害賠償請求
契約解除、損害賠償請求
完全履行請求、代金減額請求

まとめ

要するに今後売主は「知らなかった」では済まされず、隠れていようがいまいが、買主はいかなる理由があろうとも「契約したものとは違う瑕疵があった」ことが証明できさえすれば、契約を白紙に戻すために要する請求や修繕・契約内容の現状復旧にかかる費用などを請求できたり、ペナルティとして売主に減額を求めたりもできるようになったということです。

とはいえ、新築住宅の場合に限れば現行法の「品確法」や「PL法」などの法が圧倒的に厳格ですし、品質検査をして瑕疵保証に加入することで、この法改正がなされてもなお、安心かつ合理的に三方良しで解決することになります。

最後に、消費者保護の強化の観点から見ると「実際は売り手に甘かった」民法での瑕疵保証責任が、法改正後に「債権法による契約不適合責任」に法的適用用を入れ替えられ、今後は売り手の責任がとても重くなるわけですが、

それでも「瑕疵保証制度」を適用するほうが、売主の責任の重さ云々以上に、買主が実用的には安心と安全を得られるシステムになっているという結論になります。
不動産業者は、正しい知識と誠実な対応をするところを探し、自分でしっかりと選んで決めることが大事です。

クジラ先生
クジラ先生
こざかな生徒
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この記事の監修・執筆者

未来不動産コンサルタント株式会社

代表取締役 小川 樹恵子

保有資格:不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸経営不動産管理士、FP2級、証券外務員2種、貸金取扱業務取扱主任者

【本サイト(鯨鑑定士の不動産売却・投資)のメイン監修者】2007年から2014年の間に、個人の不動産鑑定事務所ほか、住友不動産株式会社に勤務し、不動産鑑定評価実務や不動産売買の経験を積み、「不動産の鑑定評価から売却・購入までワンストップ対応!」をモットーに、2014年未来不動産コンサルタント株式会社を設立し、現在は、不動産鑑定・不動産売買のほか不動産実務等の講師なども務めている。

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