自宅を安く購入したいと思うのは万人共通の願いでしょう。
しかし、あまりに安すぎる中古物件や中古マンションを購入する場合、十分な注意が必要です!
特に駅前や駅近の最高な立地条件で、築50年を超えるような中古マンション物件が平均相場を大幅に割り込んで、1000万円以下など超格安で売りに出されているケースが稀にあります。
しかし「これは掘り出し物件を見つけたぞ!」と喜んで飛びついてはいけません。
その築50年を超えた中古マンションには、実はかなり危険な落とし穴が潜んでいる可能性があるのです。
そうなのですね!
目次
建て替えの近い物件が異様に安い場合は、購入前に入念な確認を!
単に老朽化が進んでいるから安いという理由だけならまだ良いのですが、もしかすると「近い将来に建て替え予定中」の中古マンションなのかも知れません。
ここで「え?元々が超格安な上に、さらに近々建て替えてもらえるならもう最高じゃない!」と思った方は、かなり要注意です!
え、どういうことなの?と思ったらこれから先を読み進めながら一緒に勉強していきましょう。
不動産や建築の専門家の意見と知見を交えながら、築50年を超える中古マンションの取扱方法や売買の本質をしっかりと学んでいくことが重要です。
建て替え間近の激安中古マンションは実はとても経済的に不利!
「建て替え」とはすでに建築されている建物(既存建築物といいます)を解体撤去して、新たに建築しなおすことを意味します。
このときの建て替え費用について「誰が」それを負担するのか?というところが最初のポイントになります。
賃貸の場合なら特に問題はないのですが、分譲マンションで住戸を購入する場合だと、購入した時点でそのマンションの一部は「自己所有の資産」とみなされるのです。
ということは、中古とはいえ購入した以上、前住居者からその所有の権利と義務の引き継ぎを受けます。
そこで、ちょっと厄介な問題が起きるのです。
「住民は、マンションの建て替えに伴ってその費用を分担する」という決まりがあるのです。
つまり、買ったばかりの中古マンションが近く建て替えられるときは、入居者はその費用を改めて負担しなければいけなくなるという事です。
購入時に資産価値が発生しているため、これを回避する手段はなく、資産価値に見合っただけの費用を住民同士で分担する必要が生まれてくるのです。
まず、これを知らないと「え~~?!」となってしまうのです。
建て替え間近の中古マンションで負担する費用はどれくらい?
従後マンション平均負担額の推移 | |||||
~1996年 | 1997~2001年 | 2002~2006年 | 2007~2011年 | 2012~206年 | |
平均負担額 | 343.5万円 | 378.7万円 | 874.1万円 | 925.6万円 | 1,105.9万円 |
2000年度までは一戸あたりの平均負担額は約350万円前後でしたが、2002年以降急速に負担額は上がり、2012年以降では1,000万円を超えるほどです。住民が負担する多額な建て替え費用の実態が浮き彫りになっています。
なぜこれほど急速に負担額が上昇したのかについては、物価上昇などもちろん原因にありますが、一番の理由として近年の建築基準法の改正や住居にまつわる「法整備や大幅改正」による厳格化などの理由が大きいのです。
また2000年代から以降は建設市場での経済変動もかなり大きく、特に1960~1990年代までに建てられたビルやマンションの多くは、現行法規(建築基準法や品確法、PL法など)にはほとんど適合しなくなっている等の事情も影響しています。
マンションの積立金は建て替え費に充当されない?
ほとんどのマンションでは毎月、修繕積立金を設けて住民から徴収しています。しかし、これは残念なことに「修繕」のための維持管理費が目的なだけであって、建物そのものを建て替えるという意図で予算を組まれてはいないのです。
国土交通省の「マンション標準管理規約」を倣い、マンション管理規則が作られているためです。
引用元:マンション標準管理規約
建て替え費用が決定した後でも、さらに費用が発生する
それは一体どういう事か、と思うでしょう。もし建て替えることが決まり、建築費を全額負担したとしても「その後」にもまた費用が必要になるのは、ちゃんとした理由があります。
それが「建て替え工事に伴う一時仮住まいのための移転と、再引越し転居のための費用」です。
ごく当たり前の話になるのですが、建て替えが決まれば建設会社から設計図書に基づいて工事計画がなされ、工期が設定されます。この「工期」では建物の解体工事から竣工(しゅんこう)=完成するまでの間、そのマンションに住みながら生活するわけにはいかなくなります。
工期は建物の規模や構造などによってまちまちですが、一般的な鉄筋コンクリート造10階建て程度のマンションの場合だと、解体工事から含めておよそ1~2年ほどが工期の目安になるはずです。
この場合の引っ越しや一時住まい、また転居・引越しに関わる費用もすべて自己負担となることを念頭に置いておく必要があるのです。
もし建て替え費用やその後の費用が捻出できない場合はどうなる?
よく住民から主張される内容で「多額の費用がかかるので建て替えには反対ですし、立ち退きもしません。このまま住居継続を希望します」という声があがります。
しかし、これはマンションが「共用資産」という性質である以上、建物寿命や老朽化や既存不適格建築物(法律がアップデートされた以前に完成し、現在適法ではない状態の建築物)の必要性に応じて建て替えに賛同し費用を分担するか、さもなくば退去するしかないという二択の状況となります。
これはどうしても、マンション入居者にとっては避けられない未来の問題となるのです。
具体的にどういった場合に「建て替え」が決まる?
まずマンションが老朽化を迎え寿命が近づいている、または長い年月を経て、建て替えが必要なほど建物に決定的なダメージが発生しているなどの理由が前提で、かつ、入居者の4/5以上も建て替えに賛同している場合に「建て替え予定」が確定します。
この場合、4/5の賛同者については費用分担を行って住み替えなども管理組合と一緒に計画を進めていくだけなのですが、問題は「反対派」の皆様たちはどうするのか、となります。
答えは前述しましたとおり賛同しないのなら「退去」するしかなくなりますが、その場合は「売渡請求権」が行使されることとなり、現在の時価で住居中の部屋を管理組合に売り渡すように催告されます。
建て替えに不参加の意思表示をしたら、売却して退去するしかない
建替え不参加者へは売渡請求が催告されます。マンションの敷地や住戸に関する区分所有権と敷地利用権を時価で建替組合に売渡さなければならないのです。
勉強になります。
この場合、書面での「建て替え参加意思回答」は2度行われ、最初の質問のあと2ヶ月以内にもう一度書面で「建て替えに参加するかどうか」の回答を迫られるのですが、もし期間内に回答しなかった場合も含めて建替えには参加しないとみなされて「建替えに参加しない区分所有者」が確定します。
この売渡請求権は「形成権」と解釈され、権利者の意思表示のみで法律効果を生じさせられる特別な権利です。
売渡請求の意志が建替え不参加者に届いた時点で、建替え不参加者の意思にかかわらず契約が成立したものとみなされるという法的にも特別な効力を持っているものです。
ちなみに、時価の算定は専門家やデベロッパーなどに鑑定評価を依頼して行います。
この時、新しいマンションが建築された建物と敷地利用権の価格から必要な経費を差し引いた額が時価売却額として計算されるのです。
民法と区分所有法との関係一覧
民法 | 区分所有法 | |
共用部分の各共有者の持分 | 相等しいものと推定。※当事者の合意等があればそれにより決まる。 | その有する専有部分の床面積の割合による。 ※議決権も当該割合による。 |
共用部分の使用 | 各共有者は持分に応じた使用ができる。 | 各共有者は(持分に関わらず)用方に従って使用できる。 |
共用部分の保存行為 | 各共有者がすることができる。 | 各共有者がすることができる。 管理規約で別段の定めも可能(例:管理組合の理事長に 実施させる)。 |
共用部分の管理 | 各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。 | 区分所有者及び議決権の過半数で決する。管理規約で別段の定めも可能 |
共用部分の変更 | 共有者の全員の同意が必要。 | 区分所有者及び議決権の3/4以上(形状又は効用の著しい変更を伴わないものは過半数で決する。 |
マンションの建替え | 共有者の全員の同意が必要。 | 区分所有者及び議決権の4/5以上で決議。 |
共用部分の分割請求 | 各共有者はいつでも分割請求が可能。 | 分割請求をすることはできない。 |
区分所有関係の解消 | 共有者の全員の同意が必要。 | 規定なし。⇒ 民法の規定に戻る。 |
引用元:国土交通省HP 老朽化マンションの建替え等の現状について
マンションの寿命って、実際何年くらい?
最近の革新的な建築技術研究を反映する限りでは、2009年に「長期優良住宅制度」という基準が設けられ、その少し前の2000年ごろに住宅関連法規である品確法「住宅の品質確保の促進等に関する法律施行規則」が施行されています。
この頃になって初めて、マンションの寿命(耐用年数)について真剣に根拠の検証や議論が行われるようになってきますが、建築業界全般で言われている通説だと「鉄筋コンクリート造建築物の寿命はおよそ100年程度」と定義されているようです。
ちなみに寿命と耐用年数とでは厳密には定義が違うのですが、説明の便宜上「寿命=耐用年数」という言い回しで今回は統一することにします。
マンションの寿命が100年なら、建て替え期も100年後?
ところが、それが実際には杓子定規にいかないところなのです。何故なら鉄筋コンクリートそのものは躯体(くたい)と呼ばれており、実際に生活をするためにはその躯体の中に電気配線や水道などの配管を埋め込まなければなりません。
そして技術革新もこの数十年間で飛躍的に向上してきています。
先ほど大規模な「新法」の制定や整備が行われたのが2000年前後ごろと説明しましたが、では「それ以前」の技術力はどうだったのかという部分も理解する必要があり、実際の建築では構造上の問題がつきまとっています。
結論を先に言いますと、この2000年前後ごろに築30年程度、長くても築40年程度で「建て替え」を行ってきているというデータがあります。
現実には、単に「鉄筋コンクリートの耐用年数が100年だから、老朽化するのも100年後」と単純に割り切るわけにはいかないのです。
30年の短いスパンで建て替えられなければならなかった理由
日本でRC(鉄筋コンクリート)造のマンション建設が広範囲に普及し始めたのは、1960年代ごろからです。
この時代は日本の経済成長もピークを迎えていた時期で、とにかく「早く・多く・大量の戸数」の建物を日本中に一気に供給する必要性がありました。
当時はスクラップ・アンド・ビルドという考え方が経済の主流であり、細かいことを考えるよりも経済効果が何より最優先されていた社会環境です。
そのころに建築ラッシュだった昭和中期型(1960~70年代)のマンション設計では、耐震強度や大地震・大災害の際の備えも不十分であったり、コンクリートの原料資源も急速に不足するなど建築施工上での問題も多く発生していました。
結果、ずさんな施工監理や、設計上でも耐久性の優先度が低く捉えられていた実態などから、コンクリートそのものの耐久力はもとより、建物自体の劣化速度が意外に早く、設計理念から比較するとダメージのかかりも大きかったというのが実態だったのです。
1995年に発生した阪神・淡路大震災の調査の結果、耐震基準の根本性が問われた
前述の昭和中期頃に建設ラッシュで日本中に一気に建てられた鉄筋コンクリート造の建物は、マンションだけではなくオフィスビルや公共ビルなども一様に含まれます。
この時期の建設業界全体の市場は活発化めざましく、資源や材料はもとより建設業に関わる人手もまったく不足していた時代です。
そのような環境も相まって、本来のコンクリート材料では塩分を含まない川砂を使用するのが決まりであるにも関わらず、使ってはならない海砂を使ってコンクリートを大量に製造していたなどのいわゆる「欠陥」問題も浮き彫りになり社会問題になっていきました。
現在ではとても考えられない事ですが、当時の建設業界ではこういったことは氷山の一角に過ぎません。
それで建築された建物は築10年も経たないうちに雨漏りに晒されたり、砂の塩分含有量が多いことで鉄筋に瞬く間に錆を生じさせ、結果数年でコンクリートにひび割れが発生しスカスカのコンクリートになってしまったりと、この時代の施工監理がどれほどずさんだったかの実態を可視化させるきっかけとなったのが、1995年に起きたあの阪神・淡路大震災だったというわけです。
1960~80年代建設期のマンションは、2021年現在で築40~50年を迎える
阪神・淡路大震災地震で倒壊した建物に鉄筋コンクリート造のものは少なかったのですが、1960~80年代に施工されてきた木造や鉄骨造などの小規模建築物の多くが倒壊したことで、現地調査団の調査結果をもとに集計したところ、
「建築物全体の耐震設計基準や施工管理基準を根本的に見直さざるを得ない」との声が持ち上がるようになり、そこからようやく建設業全体にメスが入るようになっていった、という経緯がありました。
このような歴史的背景もあり、築40~50年を超える古いマンションの場合は「設計値よりもかなり寿命の短い建物が多い」という統計結果が現れたのです。
逆に、法整備が十分に浸透化してきた2005年以降に建築されたマンション(現在時点で築15年未満の建物)は新耐震基準や法改正後の恩恵もあって、当時の建物寿命とは比較にならないほど耐久性も性能も向上しています。
現実には、建て替え計画はほとんど進んでいないのが実情
これまでの説明で、今までに日本中にいったいどれくらいのマンションが建設されてきたのか、少し気になってきた方もおられるのではないでしょうか。
はい!
国土交通省が調査した内容によると、令和元年(2019年)の時点で日本中の分譲マンション建築戸数の総数はおよそ665.5万戸(棟数ではなく住戸数)の統計になっています。
このデータでは正確な棟数まではわかりませんが、仮に1棟の平均戸数を60戸と仮定して計算するなら、これまでに建築されたストック棟数は約11万1千棟ほどが、日本中に存在しているはずという計算になるのです。
では、実際に「建て替えが行われた棟数」を試算してみましょう。実績データは少しだけ古くなりますが、平成28年4月の時点で建替の準備中と、実施中のマンションの合計棟数で25件、工事がすでに完了したマンションが227件で、合計すると252件という数字になります。
国土交通省の建替え実績及び地方公共団体に対する建替えの相談等の件数より完成合計数
調査年 | H17.2 | H18.3 | H19.3 | H20.4 | H21.4 |
完成数 | 120 | 131 | 148 | 163 | 177 |
調査年 | H22.4 | H23.4 | H24.4 | H25.4 |
完成数 | 184 | 195 | 207 | 218 |
引用元:国土交通省HP 老朽化マンションの建替え等の現状について
全国で建て替えされた(される予定も含めて)棟数が252件ということは、これから建て替えるべきストック棟数との比率を計算すると 252÷推定111,000棟=で、なんと全体の0.23%しか実際に建て替えされていないという結論になります。
この実績こそ、逆を言うと実に99.977%のマンションが「建て替えを行っていない・できない」状態であることを裏付けています。
このうち、ごく僅かに「入居者の費用負担なしで建て替えができる」物件があったり「行政などの支援」を受けて建て替え費用を捻出できる、非常に珍しいケースのマンションが建て替えを実施していると解釈できるため、事実上住人の4/5以上が「自費」で建て替えに賛同することはまず、ないと解釈してよさそうです。
では次は、その入居者の費用負担が「なし」でも建て替えることができるという、レアなケースについて説明していきます。
中古マンションの建て替え予定で、入居者負担「なし」になる場合も
老朽化した中古マンションであっても、一概に必ず入居者が建て替え費用を負担するべきと決まっているわけではありません。
例えば「旧耐震基準」で建築されたマンションで、増床する予定があるなら入居者の建て替え負担額がなくなる可能性も十分にありえます。
旧耐震基準で建築されていた古いマンションで、かつ容積率に十分な余裕がある場合
例えば東京渋谷区の青山や港区の白金台など一部の地域では都市計画法によって、以前は低層住宅しか建築することができなかったエリアが、法改正で容積率が大幅に緩和されたため住戸数も大幅に増床可能となり、中層から高層型のマンションに建て替えられるようになったケースなどがこれにあたります。
もしこういったケースであれば「元々は存在しなかった戸数」を完成した後で一般販売することが可能となるため、販売利益自体で建築費が十分賄えることになり、結果 既存入居者に負担してもらわなくても建て替えが可能になった実例となります。
容積率って何?
都市計画法や建築基準法によって、それぞれの建物に建ぺい率や容積率などの基準が設けられています。
建ぺい率は建物の敷地全体に対して、どのくらいの割合で建築面積(平面的な広さのことで階数は除外される)を占めているのかを表す数値(%)で、容積率は延べ床面積と呼ばれる、敷地面積に対してどのくらいの割合で部屋数があるのかを表す数値です。
この容積率は、都市計画法や指定区域などにより各地域ごとに細かく決められていて、例えば容積率100%と指定された地域だと、敷地面積=床面積100%となり、せいぜい平屋か、頑張って3階建て程度の低層住宅しか建てられないということになります。
しかし、それが元々100%だった容積率が最近になって1500%など数倍~十数倍に拡張された場合、途端に高層化することも可能になってきます。
こういった容積率の変更は、都市計画法や政令指定都市などの自治体の協議や取り決めなどで変化するため、自分のマンションのエリアはどのような容積率になっているのか等の情報に、アンテナを立てて把握しておくことも大事なのです。
マンションの建て替え費用が掛からないのは住戸数増の場合がほとんど
旧耐震基準にあたっているかどうかは別の話にしても、基本的に負担なし、または低負担率で建て替えが実際に成功している実例もあります。ここではその成功例を2つほど見ていきましょう。
実際に建替えに成功しているマンションを見ると、住戸は平均で1.9倍に増えています。
2019年時点で建替中及び建替えられたマンション256件の実例から抜粋
物件名 | 建て替え前 | 建て替え後 | 成功の背景 |
アトラス国領 (東京都調布市) | 144戸容積率58% | 320戸(2.2倍増戸)容積率199.9% | 大幅な容積率緩和のため |
諏訪2丁目団地 (東京都多摩市) | 640戸容積率50% | 1,249戸(1.95倍増戸)容積率150% | 日本最大級の容積率緩和のため |
ですが、現実問題としてはほとんどの既存中古マンションは容積率制限に余裕がないのが実情です。
なぜなら近年では、新築でマンションを建設するディベロッパーは、容積率をギリギリ限界まで使って建物を設計し、販売戸数を1戸でも多く確保しようとするためです。
特に、築年数50年以上の古いマンションの場合だと1970年以前の都市計画法に基づいているため、当時の日本経済情勢を振り返る限り、高度経済成長を経てバブル経済に向かっていた時代です。
その頃に開発されたマンションは現在の国内情勢とは違い、多くの建物の容積率は現在基準に合わせるとオーバーしてしまっている、というわけなのです。戸数減となってしまうと、負担率は購入時より更に高額になります。
なので低負担や負担なしで建て替えに成功した事例を見る限りは「まれ」なケースだと言わざるを得ません。
建て替え費用が軽減できるケース1
「公的融資」
建て替えによって負担する額を軽減する方法は全くないのか?となると、全くないわけでもありません。
ただし条件が付与されているので以下に詳しく説明します。
助かります!
1つ目は、60歳以上の住民に限って適用される制度で「高齢者向け返済支援制度」というものがあります。
どういうものかと言うと住宅金融支援機構(旧・住宅金融公庫)が関わって支援している、死亡時一括償還型リフォーム融資と呼ばれる制度を利用する方法です。
これは満60歳以上になった高齢者などの自宅をバリアフリー化する工事や、耐震改修工事を目的にリフォームを行う場合などに適用される融資制度で、通常の住宅ローンとは別枠で「最高1000万円までを限度」に直接融資を行うという行政的な性質を持つものです。
60歳以上となった住人がこれを利用することで、申込人がもし死亡した場合など相続人が担保提供された土地や建物などを処分することで、一括返済が可能になります。
申込人が死亡すると、毎月の返済額は「利息のみ」でよく、申込時の上限年齢も設定されていないため返済は低額で抑えられるという救済措置を受けることができます。
とはいえ、この方法はあくまで「融資」であることに変わりがなく、申込条件が60歳以上と定められていることから50代以下の若年者層は利用できないこと、また負担そのものを軽減したり減額されれるわけではない事に注意が必要です。
建て替え費用が軽減できるケース2
「マンション再生まちづくり制度」
詳しくは後述しますが、前項の説明により対象マンションの容積率が飛躍的に上がっているケースは希なため、また住人の多くの方が建て替え費用の捻出が厳しい経済状況にあることも相まって、事実上ほとんどの古い都市型マンションでは「建て替え」が進んでいないという根深い事情があります。
東京都の調査によると、2017年でおよそ5万棟の分譲マンションのうち2割程度が、旧耐震基準(法改正前の1981年以前)にしたがって建設されたマンションであることが把握されています。
行政としては、近年起こるであろう首都圏大地震の発生を見越して相当数以上の旧基準のマンションが新基準で建て替えられる事を望んでいるのですが、実際は前述のように容積率の不足や、昨今の国民の経済事情なども含めて現実問題は中々に厳しい状況にあると言わざるを得ません。
そこで、東京都では「マンション再生まちづくり制度」という制度を設けました。
これはマンション周辺の敷地と共同化することによって建て替えを推進し、また建て替えに必要な費用の一部を補助するなど具体的な支援策を考案しています。
ただ現実的には、2015年から多摩ニュータウンや杉並区の方南町駅周辺など一部地域しかモデル事業として推進されておらず、都内全域が対象になるのはまだしばらく時間がかかる可能性がありますが、
推進地域に指定されるとマンション建て替えに向けた根本的な支援が受けられることが期待できますので、東京都公式ホームページなどをチェックしてお住まいの地域が指定されていないか確認してみるのも良いでしょう。
事前売却を視野に入れるのも有効策
お住まいのマンションに「建て替え時期」が迫っている場合、前項で説明したように軽負担率、または負担なしでの建て替えが可能な状態だったり、あるいは建て替えや一時転居費用の捻出が我が家はしっかりと賄える!という経済状況であれば何も言うことはないのですが、
もし「費用負担が重くのしかかって難しいかも…」という場合には「事前売却」を検討するのも有効な対策の一つとなります。
事前売却は建て替え計画のどのくらい前から検討すべき?
少なくとも、建て替え計画が決定するであろう1年以上前から行動しておくのがおすすめです。
間違っても、建て替え賛同意見の有無を回答しなければならないくらいギリギリまで手を打たないのは得策ではないのです。
なぜなら、その時点で費用負担ができない場合は退去を余儀なくされ、時価売却譲渡以外の選択肢がなくなってしまうからです。
せめて1年間の猶予が残されているなら、不動産会社の仲介や物件が検索され購入を検討するタイミングなど余裕があるため、時価よりも高値で売る交渉ができる可能性があるからです。
とはいえ、売りに出したからと言って期間内に必ず売れる保証はないですし時価より高値で売れる確約もありません。それでも自分で何とかしようとするよりは、複数の不動産業者によるプロの仲介力を頼って買い手を探してもらう方が、よほど希望価格に近くで販売できる確率は高いと言えます。
仲介売却の依頼はでどこを選ぶのがいい?
売値は不動産会社の査定によってまちまちになります。なぜ価格差が生じるのかについては、各不動産業者の特性や得手不得手があるためです。
自分で交渉しようとせずに、できるだけプロの査定士のいるマンション販売に強い不動産業者を一括査定依頼するなどして、うまく余裕を持った売却に繋げるように心がけておくと良いでしょう。
まとめ
今回、中古マンションで建て替え時期が迫っている物件の売り手、買い手それぞれにとっての見極め方などをご紹介しました。
実際は日本中の多くの中古マンションが建て替え時期になっているにも関わらず、ほとんど建て替えに至っていない現状や、建て替えが決定した時に格安で売りに出されている物件を知らずに購入してしまうと、思わぬ費用が降りかかってくることなど様々な背景が理解できたのではないかと思います。
中古物件を売る場合も買う場合も、どちらにとっても双方が納得のいく形で気持ちよく取引に進めるように、プロの不動産業者へまずは仲介相談などを行うことが肝心ですね。